2022 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis of the fast Li+ conductors based on Na compounds and investigation of their ion conduction properties
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22H02179
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 怜雄奈 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10756191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 将伸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10401530)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 固体電解質 / Li+伝導体 / Na化合物 / 全固体Li電池 / RMC解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Li電池の安全性向上のため、不燃性の固体電解質を用いた全固体Li電池の開発が急務である。本研究では、Liフリーハロゲン化物であるNaI格子中にドープされたLi+の伝導現象の起源を解明し、Na化合物を用いて高性能な全固体Li電池を開発することを目指している。NaI-NaBH4-LiI系の固溶体は、ドープ量が10 mol%以下のLi+が伝導種になる。このNaI-NaBH4-LiI系を固体電解質として用いて、全固体電池を作製し充放電特性を評価した。Li/S電池は、S合剤中の導電助剤の混合比を最適化することで、1480 mAh/gの初回放電容量が得られた。Naを対極とすると動作しなかったことから、Na/S電池ではなくLi/S電池として動作していることが確認された。またNaI中をLi+が優先的に伝導する構造的起源を、中性子散乱測定により調べた。散乱データから計算された簡約二体分布関数を基に、RMC法により局所構造を解析した結果、Li+はNaサイトの中心を占めるのではなく、off-centerになっていることがわかった。このoff-center Liが、その周囲の広い自由体積ゆえに、NaIを伝導可能であることが示唆された。BH4-含有試料については、ポーランドのSlawinskiが開発したRMCProfile7を用いて、共同で解析していく予定である。NaI以外の化合物については、Na3OBrやNa3OBH4などのアンチペロブスカイト化合物を合成している。研究室で恒常的にNa2O精製をできており、Na3OBrを合成する環境を構築している。今後は焼結条件を決定し、伝導度測定を行う。また、Li+/Na+混合のLi+伝導体におけるLi溶解析出機構ついて、臨界電流密度とLi析出形態を明らかにする。超高倍率の光学顕微鏡をGBに導入し、Li界面付近をその場観察して、Li析出形態を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では9(15NaI-NaBH4)-LiIを固体電解質に用いてLi/S電池を構築し、充放電特性を調べた。またNaI中にドープされたLi+伝導の起源を探るために、1H、6Liおよび10Bをそれぞれ2D、7Li、11Bに同位体置換した、9NaI-LiIおよび9(15NaI-Na11BD4)-7LiIを作製し、中性子散乱測定を行った。得られた散乱データを基に、RMC解析によりLi+周囲の局所構造を調べた。S/Liは、Sの電子伝導性が低いため、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)を混合した。Sと固体電解質(SE)とKBの混合比を変化させて正極合剤を作製した。その結果、S:SE:KB=2:7:1で混合した合剤において、1480 mAh/gの初回放電容量が得られた。これは理論容量の87 %程度である。また対極としてNa金属を用いると、放電できなかったことから、ここでもSEがLi+伝導体であることが確認された。したがってNa化合物を用いても、Li/S電池が動作可能であることが実証された。中性子散乱パターンのRietveld解析の結果、LiとBH4がそれぞれNaとIサイトに置換固溶していることが結晶学的に示され、狙い通りの組成の固溶体が合成できたことが確認された。また散乱データから計算された簡約二体分布関数を基に、RMC法により局所構造を解析した結果、Li+はNaサイトの中心を占めるのではなく、off-centerになっていることがわかった。これはLi-IとNa-IのBoned Valence Sumを考えることで説明される。すなわち、NaI格子中のI八面体の空隙はLiには大きすぎるため、LiはよりIの近くを占有する傾向があることが、定性的に理解される。Liがoff-centerとなったことで、Li周囲には自由体積が多くなることがLi+伝導に繋がる構造的起源ではないかと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
NaI-LiIは、BH4-をドープするとLi+伝導度が1桁程度上昇する。したがってNaI中でBH4-がLi+伝導に与える影響を解明することで、さらなるLi+伝導度向上の指針が得られると考えられる。しかしこれまでのRMC法による局所構造解析は、BH4を含まないNaI-LiI系のみを対象としてきた。これは、BH4-の四面体とI-イオンのSwapを行うことが、現行のRMCProfileでは難しいためである。BH4-含有試料については、ポーランドのSlawinskiが開発したRMCProfile7を用いて解析中であり、Li+伝導度向上に繋がるBH4-イオン役割を共同で解明していく。NaI以外の化合物は、Na3OBrやNa3OBH4などのアンチペロブスカイト化合物を合成している。これらはNa2OとNaBr、NaBH4をボールミリング・ポストアニールすることで合成できるが、原料に高純度なNa2Oが必要である。市販のNa2OはNa2O2を含んでいる。研究室内でNa2O中の残留Na2O2をNaで還元し、Na2Oを精製する手法を確立しており、純度の高いNa2Oを恒常的に合成できている。今後は緻密なペレットの作製条件を決定し、Ca2+やBr-過剰試料の伝導度測定を行い、ドーパントがNa+伝導特性に与える影響を調べていく。固体電解質として用いるためには、Liの溶解析出機構を解明する必要がある。固体電解質を用いてLi/Li対称セルを充放電すると短絡するが、その原因やメカニズムはわかっていない。更に、これらの研究はLi化合物に注力されており、Li+/Na+混合のLi+伝導体におけるLi溶解析出の知見はほとんどない。今後は臨界電流密度を求め、短絡後の電解質ペレットのSEM観察により微細構造を調べる。また超高倍率の光学顕微鏡をGBに導入し、Li界面付近をその場観察してLi析出形態を調べていく。
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Research Products
(16 results)