2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of oxygen reduction reaction of fuel cell cathode using oxygen adsorption structure analysis by high resolution XAFS
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22H02188
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 裕久 関西学院大学, 工学部, 教授 (10521304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30425566)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 酸素還元反応 / 触媒 / 吸着構造 / アニオン交換膜 / ラジカル生成 / 白金 / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の夏の気温が体温を超えるようになったのはいつからだろう。台風は、その勢力だけでなく、日本への上陸の軌跡も、大きく変容を遂げている。梅雨さえも、もはや日本情緒を感じさせるものではなく、熱帯のスコールの如き猛威を長きに渡り振るい続けている。気候変動を肌身で感じる自然災害が頻発している。 IPCCは、気候変動は化石燃料の大量消費などの人類の経済活動であると強く結論付けている。温暖化が人為的なものであれば、それを制止するのも全人類の務めであり、特に我々科学者に取って待ったなしの責務である。産業界ではエネルギーの脱炭素化が急務となり、実効性のある解決策として燃料電池が期待されている。 本研究は、燃料電池の抱える根源的な課題を基礎科学的解析により解決し、広範な普及を可能として、二酸化炭素排出量低減に貢献することを目的とする。燃料電池の更なる普及のためには、電極触媒の脱白金化が不可欠であり、加えて水素インフラ負荷を低減するため燃料多様化が鍵となる。アニオン交換膜形燃料電池(AEMFC)は、非白金化が期待されるとともに、液体燃料からの直接発電など燃料多様化にも適し、次世代の自動車用燃料電池として期待されている。 AEMFCは大出力が得られる一方で、発電中に急激な「劣化モード」が存在し、高分子膜とアイオノマだけでなく、触媒担体やセパレータの炭素までもが材料劣化するという致命的な課題を経験した。本研究は、このラジカル生成機構を解明して、材料対策と同時に、「劣化モード」を回避する燃料電池作動環境を提案する。トンネルの向こうに見える一筋の光を頼りに、学術的基盤研究が産業界の抱える課題の突破口に至る道筋となることを示す。 2022年度は標準状態を知る目的で、普及している白金電極・酸性環境の燃料電池における酸素還元反応(ORR)の反応スキームの全容を明らかにすることに成功し、ジャーナル論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究自体は順調に進展しており、計画通り酸性環境におけるPt/C触媒上での酸素還元反応スキームを解明することに成功した。 ただ、当初の想定に反し、ドイツ企業(Fumatech社)の在庫切れにより、固体高分子アニオン交換膜の購入が困難であることが判明した。またコロナ禍の影響により、当初計画していた研究成果の国際学会での発表を2023年度以降に順延せざるを得ない状況となった。これらの事情により予算繰越の申請をさせていただいた。 2022年度はベンチマークとして標準状態を知る目的で、一般に普及している白金電極・酸性環境の燃料電池における酸素還元反応(ORR)の反応スキームを調査した。 放射光実験のための基礎実験として、ラボでの回転リングディスク電極(RRDE)を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、Pt触媒における過酸化水素を生成する電位範囲を明確にした。その結果を踏まえて、春・秋2回に渡りSPring-8のBL11XUにおいて高エネルギー分解XAFS実験を実施し、酸性環境でのPt触媒上でのORR過程の吸着種を詳細に調べ、反応スキームの全容を明らかにすることができた。 研究成果は「Investigation of hydrogen superoxide adsorption during ORR on Pt/C catalyst in acidic solution for PEFC by in-situ high energy resolution XAFS, Journal of Power Sources, 557 (2023) 232508」に論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度から本研究の目指す脱白金触媒として、Fe-N-C 触媒を中心に設計試作する。出発原料やプロセス条件の検討により、Feが金属や酸化物粒子として存在せず優先的にNに配位されたFe-N-C 錯体触媒を合成する。 電気化学計測に関して、アルカリ環境において回転リングディスク電極(RRDE)を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)計測を実施し、ORR反応中間生成物である過酸化水素を定量する。 ORRにおける触媒表面での吸着種の解析は、SPring-8 のBL11XUの高分解能XAFS光学系の変更に対応してオペランド測定用試料セルを改良し、Fe-N-C触媒のような希薄系試料に対しても高精度な測定が可能なように進化させていく。 得られた研究成果は、Electrochemical Societyなどの国際学会での発表と討論を積み重ねて、ジャーナル論文掲載へと繋げていく。
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