2022 Fiscal Year Annual Research Report
生体内トラフィッキングを制御する分子集積ウイルスレプリカの創製
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22H02199
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松浦 和則 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60283389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウイルスレプリカ / 生体内トラフィッキング / エンベロープ / ヘマグルチニン / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳などの特定臓器・特定細胞・特定オルガネラへトラフィッキングする人工材料を構築できれば、革新的なドラッグデリバリー材料として有用であるが、これまでそのようなウイルス模倣材料を創製した例は無い。本研究では、研究代表者が培ってきた「化学ウイルス学」に基づいた機能性分子修飾人工ウイルスキャプシドの構築技術を駆使して、脳内・標的細胞・細胞内標的部位へトラフィッキング制御する分子集積ウイルスレプリカを化学の力で創製することを目的としている。 今年度は、エンベロープ型人工ウイルスキャプシド上に、無細胞発現系を用いて、ヘマグルチニン(HA)を搭載した「インフルエンザウイルスレプリカ」を創製した。HA発現は、SDS-PAGEおよび抗HA抗体を用いたウエスタンブロッティングにより確認し、HAがエンベロープ上に搭載されていることを、抗HA抗体と金ナノ粒子ラベル二次抗体を用いたTEM観察により明らかにした。さらに、ヘマグルチニン搭載ウイルスレプリカの分子認識能を、糖脂質GM3を電極上に固定化した水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて定量解析し、100 nMオーダーでGM3に選択的に結合することを明らかとした。 また、効率的な新規ウィルスレプリカ作製手法の開発ならびにウィルスレプリカに対する組織、細胞への標的指標性の付与、などもおこなった。具体的には、ウィルスレプリカ作製に際して、新たに開発した脂質膜透過法を用い、脂質膜を効率的にコア微粒子に被覆する手法を見出した。標的指標性の付与を目的として磁性ナノ粒子を脂質膜と複合化する手法を開発した。さらに、複数の膜タンパク質を単一のウィルスレプリカに搭載するための手法の開発を目的として、固相合成法により脂質膜被覆微粒子に対して複数の膜タンパク質を簡便に搭載することが可能であることを予備的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、無細胞発現系を用いて、細胞間ギャップジャンクションを形成する膜タンパク質であるコネキシン-43を搭載したウイルスレプリカを創製し、コネキシン発現ジャイアントリポソームやHepG2細胞へのギャップジャンクションを介した蛍光色素の輸送が可能であることを実証している(RSC Chemical Biology, 2022, 3, 231)。また、同様の手法で、ヘマグルチニン(HA)を搭載した「インフルエンザウイルスレプリカ」の創製に成功し、リガンドであるGM3含有脂質二分子膜への結合を確認している。このように、エンベロープ型人工ウイルスキャプシドに対して無細胞発現系を使用することにより、様々な機能性膜タンパク質を搭載したウイルスレプリカの創製が順調に進行している。その他にも、リボヌクレアーゼSを搭載した人工ウイルスキャプシドが細胞内RNAをある程度分解することで抗がん活性を示すこと(ChemBioChem, 2022, 23, e202200220)や、表面をBODIPY修飾した人工ウイルスキャプシドがπ-πスタッキングにより安定化すること(Chemistry Letters, 2022, 51, 1087) を見出し論文発表している。 ウィルスレプリカ作製においては、今後、エンベロープを効率的に付与する手法の確立も求められる。そのための新たな手法として、密度勾配溶液中に作製した脂質膜層に対してナノ微粒子を透過させることで脂質膜を被覆する脂質膜透過法(Small, 2023, 19, 2206153)や、ウィルスレプリカのエンベロープに対して、磁性ナノ粒子をハイブリッドし、磁気誘導能を付与することが可能となる新たな手法(Nanoscale Advances, 2022, 4, 1999-2010)を見出し、これらを論文発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築したヘマグルチニン搭載ウイルスレプリカのシアリルラクトース発現細胞であるヒト肝癌由来細胞株HepG2への取込過程をCLSMにより観察し、抗がん剤などの薬物送達能を検討する。また、コロナウイルススパイクタンパク質搭載ウイルスレプリカのACE2レセプターへの結合を介した細胞内取り込みについても、CLSM観察やフローサイトメトリーにより詳細に検討し、ウイルスの細胞への感染機構のモデルとしての有用性を検証する。また、血液脳関門(BBB)シャトルペプチドを提示した人工ウイルスキャプシドにDOTAP/DOPC脂質を複合してBBBシャトルペプチド提示エンベロープ型ウイルスレプリカを構築する。DLSおよびTEMによるナノ構造評価に加え、ヒトトランスフェリンレセプターとの結合を QCMなどにより定量的に解析する。また、BBB キットを用いて、ラット由来脳内皮細胞・ペリサイト・アストロサイトをメンブレンフィルター上に再構成し、in vitroでのBBBシャトルペプチド提示エンベロープ型ウイルスレプリカのBBB通過能を評価する。さらに、核輸送シグナルペプチドやミトコンドリア移行シグナルペプチドを修飾したウイルスレプリカの創製も検討し、細胞内トラフィッキングの制御を達成したいと考えている。 無細胞発現系を用いて、ヘマグルチニンやコロナウイルススパイクタンパク質などの膜タンパク質をウィルスレプリカに搭載できることを明らかにしてきたが、新たに開発した膜タンパク質固相合成により、これらの膜タンパク質の多段階合成が可能であることを予備的に見出している。今後、この手法をさらに展開し、コロナウィルスが保持する感染関連膜タンパク質や膜融合性の膜タンパク質などを複数種類、効率的に搭載したウイルスレプリカの作製について検討を行う。
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Research Products
(45 results)