2022 Fiscal Year Annual Research Report
疾患関連リピートRNAの相分離を制御するケージドリガンドの創製
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22H02221
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堂野 主税 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60420395)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ケージ化合物 / リピートRNA / RNA結合リガンド / 相分離 / リピート病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「疾患関連リピートRNAの相分離を制御するケージドリガンドの創製」では、リピートRNAの構造変化を誘導するRNA結合リガンドを基盤として、その光感受性保護体である(1)ケージドリガンドの創製、(2)ケージドリガンドによるリピートRNA相分離の制御、(3) 生細胞中におけるRNA fociのダイナミクス解析、を実施し、相分離、RNA fociの関わるリピートRNAの機能解明を目指す。 本年度は、項目(1)ケージドリガンドの創製を実施した。光感受性保護基の導入対象分子として、RNA結合小分子リガンドであるNCDを選択した。NCDは、UGGAA、CGG、GGGGCCリピート等の神経変性疾患の発症に深く関わる、リピートRNAおよびDNAに結合することが明らかになっている。UGGAAリピートに対しては、親和性、結合選択性が高く、複合体構造が解明されているため、リガンドのケージ化に必要となる複合体形成時における位置、構造情報を活用し、分子設計指針に反映させた。光感受性保護基としてカルボキシメチルクマリンを、NCDの分子骨格中に含まれる2級アミノ基に導入したケージドNCDを設計し、その化学合成を実施した。7-アミノ-4-メチルクマリンを出発原料として、まずt-ブチルエステルとして保護したカルボン酸を7位アミノ基に2つ導入したのち、4位のメチル基をヒドロキシメチル基へと変換した。4位のヒドロキシ基は、活性炭酸エステルとした後、NCDのアミノ基と縮合することで、目的とするケージドリガンド、ケージドNCDの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行の鍵となる新規分子、ケージドNCDの化学合成に成功した。光感受性保護基として選択したクマリン誘導体は、既存の合成手法を改変することで、より温和で安全な反応経路を経て合成することが可能となった。NCD部位の合成は、研究代表者らにより確立された合成手法に従って行った。続くNCDに対する光感受性保護基(クマリン誘導体)の導入は、活性炭酸エステル法を採用することで、簡便な縮合反応により実現した。ケージドリガンドの創製は本研究推進の重要な1段階目であり、当初計画通り順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を踏まえて、ケージドリガンドの合成法を確立するとともに、他のリガンドへ直ちに適用できる環境を整える。また、得られたケージドリガンドの物性評価を行う。すなわち、ケージドNCDと標的核酸配列の親和性評価、および、光感受性保護基の脱保護反応の解析を進める。親和性評価では、ケージドNCD存在下で標的配列(UGGAA、CGG、GGGGCC)の二本鎖融解温度解析を実施することで、標的への親和性、選択性、安定化効果を明らかにする。近紫外光(365 nm)照射可能な各種光源を用いて、種々条件下(照射波長、時間、水系での塩、緩衝液など)における脱保護反応を検討する。光照射時におけるケージドNCDの消費、NCDの再生、副生成物の生成を定量し、光照射有無で二本鎖融解温度の変化が大きくなる条件を決定する。
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