2022 Fiscal Year Annual Research Report
相同組換え効率の向上を目指したDNA修復機構に関する研究
Project/Area Number |
22H02237
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤山 茂樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (80357178)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | DNA修復機構 / ゲノム編集 / ラビリンチュラ / 微細藻類 / 緑藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「相同組換え効率の向上を目指したDNA修復機構に関する研究」は、外来DNAの相同組換えが難しい多くの真核生物について、DNA修復機構の謎解明を目指した研究である。低塩濃度で培養すると相同組換え効率が向上するラビリンチュラ類を中間型モデル生物とし、相同組換え効率が特に低い単細胞緑藻の原因解明を本研究の目的とする。ラビリンチュラ類の知見を緑藻と比較しながら、3つのDNA修復機構、相同組換え(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)について研究を進めている。 微細藻類やラビリンチュラ類は、DNA修復機構に関わる遺伝子が未知なものが多く、その制御機構や転写解析も進んでいない。令和4年度の本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、広範なデータからの注釈付を行うことでDNA修復機構関連候補遺伝子を探索した。また、ラビリンチュラ類はDHA等のω3系脂肪酸やアスタキサンチン等のカロテノイド生産源として近年注目されているが、光や浸透圧ストレスといった環境適応分子メカニズムについては未解明である。本研究では、本種の環境ストレスへの応答機構とDNA修復機構との関連を、分子レベルで明らかにするため、網羅的転写データを取得し、その解析を実施した。光ストレスと浸透圧ストレス、それぞれに応答して転写量が変化する遺伝子を網羅的に解析した研究成果等を、査読付き国際原著論文3報にそれぞれまとめて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「どうして多くの真核生物は、外来DNAを用いた相同組換え(HR)が起きづらいのか?」という学術的な問いに対する答えを用意することにある。そのために本研究では、HRが起きやすい酵母とHRが特に起きづらい緑藻の中間に位置するラビリンチュラ類Aurantiochytrium limacinumをモデル生物として用いる点が、学術的独自性と創造性が高い特色である。A. limacinumは、低浸透圧ストレスによりHR効率が向上すると考えられている。ラビリンチュラ類の知見を緑藻と比較しながら、3つのDNA修復機構、相同組換え(HR)、非相同末端結合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)について研究を進めている。 微細藻類やラビリンチュラ類は、DNA修復機構に関わる遺伝子が未知なものが多く、その制御機構や転写解析も進んでいない。令和4年度の本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、広範なデータからの注釈付を行うことでDNA修復機構関連候補遺伝子を探索した。また、ラビリンチュラ類はω3系脂肪酸の生産源として近年注目されているが、光や浸透圧ストレスといった環境適応分子メカニズムについては未解明であるため、本研究では、本種の環境ストレスへの応答機構とDNA修復機構との関連を、分子レベルで明らかにするため、網羅的転写データを取得し、その解析を実施した。光ストレスと浸透圧ストレス、それぞれに応答して転写量が変化する遺伝子を網羅的に解析した研究成果等を、査読付き国際原著論文3報にそれぞれまとめて報告したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(サブテーマ①ラビリンチュラDNA修復機構の解析) DNA修復機構解析のモデル生物として、低塩濃度ストレスにより外来DNAを用いたHR効率が向上するラビリンチュラ類A. limacinumを用いる。令和4年度に行ったA.limacinumにおける、低塩濃度ストレス条件および明ストレス条件の網羅的転写解析の結果や先行研究等を総合的に検討し、3つのDNA修復機構に係わる鍵遺伝子の絞り込みを行う。さらに、絞り込んだ鍵遺伝子について、クローニング、発現用プロモータの検討を進める。
(サブテーマ②緑藻DNA修復機構の解析) 外来DNAを用いたHRが特に起きづらいモデル緑藻C. reinhardtiiについて、3つのDNA修復機構に関する転写情報を解析し、先行研究等を総合的に検討し、3つのDNA修復機構に係わる鍵遺伝子の絞り込みを検討する。特に、細胞周期において、HR効率が比較的高いG2後期と低いG1後期、それぞれの条件についてDNA修復機構に係わる遺伝子の転写情報を解析する。
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