2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the redox dynamics of phosphorous by in-situ mearsurement
Project/Area Number |
22H02243
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
廣田 隆一 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (90452614)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 還元型リン化合物 / マイクロコズム試験 / 独立栄養細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般にリンの生物循環において酸化還元状態の変化は介在せず、リン酸(P価数+V)またはそのエステル化合物のみで循環すると考えられている。本研究では、多くの微生物に還元型リン化合物の酸化の能力が存在することに着目し、亜リン酸などの還元型リン化合物の直接測定や亜リン酸を利用する化学独立栄養細菌の解析を通して、新たなリン循環経路の存在を解明することを目的としている。 今年度は還元型リン化合物のみを利用するセンサー株(藍藻)のマイクロコズム環境内での細胞数増減を調べ、原位置測定における生育限界亜リン酸濃度を調べた。その結果、藍藻の亜リン酸センサー株では5マイクロモル/L以上の亜リン酸を検出できる事が明らかとなった。さらに低濃度の亜リン酸を検出するために、亜リン酸デヒドロゲナーゼを用いたバイオアッセイによる検出系の最適化を行い、高感度の測定系を確立した。これらの測定系を使用し、広島県の複数の河川水をモデルとして亜リン酸の測定を実施した結果、ほとんどの試料において亜リン酸は検出限界値(0.4 nM)以下であったが、広島市のある地点でのみ、約6.5 nMの亜リン酸の存在が示唆された。一方、近年の報告で亜リン酸をエネルギー源として増殖する化学独立栄養細菌(DPOM)の存在が明らかにされている。そこで、環境亜リン酸の存在を調べる手がかりとしてDPOMのスクリーニングを行った。国内の複数の干潟・海洋・河川などから低泥を採取し、亜リン酸を電子供与体とする嫌気培養を行った。その結果、複数の地域から亜リン酸酸化活性を示す培養系を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原位置測定に用いる亜リン酸センサー藍藻株のマイクロコズム環境における亜リン酸の検出限界値を調べた結果5マイクロモル/Lであることが確認された。この感度では対応できない可能性があると考えられたため、申請者らが独自に開発しているバイオアッセイ法による検出系の最適化を行い、測定限界値100 nMの測定系を構築することができた。さらに、本手法はサンプル試料の濃縮にも対応可能であるため、原理上濃縮倍率に応じた検出感度の向上が可能となった。また、亜リン酸が存在する環境を絞り込むため、亜リン酸をエネルギー源として増殖する化学独立栄養細菌(DPOM)のスクリーニングを実施した。その結果、主に汽水および海水環境の低泥試料のうち、複数の試料からDPOM活性を示す培養系を取得することができた。原位置測定については、検出感度や対応環境に関する課題が見出されたが、DPOM培養系は世界的にも数例しか報告されておらず、非常に興味深い成果が得られたと考えている。現在、スクリーニングの対象を拡大するとともに、得られた培養系の詳細な解析を行っている。また、これらのDPOMが得られた地点は、汽水および海水条件であり、現有するバイオアッセイおよびセンサー菌では対応できないため、今後は海洋性藍藻を用いたセンサー菌の開発も平行して実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
亜リン酸の原位置測定については、今年度の研究によって検出感度や測定可能な環境条件に関する課題が見出されたが、いずれも別の方法論による解決が見込まれている。亜リン酸測定においては、高感度バイオアッセイのみでは海洋サンプルへの対応ができない可能性があるため、過硫酸カリウムを用いた亜リン酸特異的な酸化とモリブデンブルー法による測定を新たに検討する。また、海水条件に対応可能なセンサー株については、海洋性藍藻のセンサー株作製を進める。既に亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入とリン酸輸送体遺伝子の破壊に成功しており、今後亜リン酸特異的輸送体の発現に取り組む。 一方、DPOMの存在を指標として、亜リン酸測定のための対象を絞り込むことができる可能性があるため、次年度は今回スクリーニングに成功したサンプルを中心に測定を行う。得られているDPOM集積培養系に関しては、詳細な培養経過の解析や菌叢変化を行うとともに、DPOMの単離も試みる。
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Research Products
(4 results)