2022 Fiscal Year Annual Research Report
Gene regulatory mechanisms involved in the quality of the white koji
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22H02246
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
二神 泰基 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60512027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 尚徳 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20212045)
後藤 正利 佐賀大学, 農学部, 教授 (90274521)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 白麹菌 / クエン酸 / MAPキナーゼ / クエン酸排出輸送体 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
焼酎製造に用いられる白麹菌Aspergillus luchuensis mut. kawachiiは、原料に含まれるデンプンを分解する糖質加水分解酵素に加えて、多量のクエン酸を分泌生産することでもろみのpHを酸性に保ち、雑菌汚染を防ぐ役割がある。本研究の目的は、麹造りにおいて白麹菌がアミラーゼなどの糖質加水分解酵素とクエン酸などの有機酸の生産を制御する機構を明らかにすることである。先行研究において、クエン酸の生産にはクエン酸排出輸送体cexAの発現が中心的な役割を担っており、cexAの発現レベルは推定メチルトランスフェラーゼLaeAによりエピジェネティックに制御されることを報告した。しかし、LaeAの上流にある制御因子については明らかになっていなかった。本年度は、白麹菌におけるMAPキナーゼとクエン酸生産制御機構の関連性について解析した。白麹菌においてMAPキナーゼをコードするmpkA、mpkB、およびmpkCの単独破壊株における、乾燥菌体重量当たりのクエン酸生産量を測定した結果、mpkA破壊株およびmpkB破壊株のクエン酸生産量は、コントロール株と比べて有意に減少した。mpkC破壊株とコントロール株では、クエン酸生産量に大きな差は見られなかった。さらに、クエン酸輸送体遺伝子であるcexAの転写量をqRT-PCRにより測定したところ、mpkA破壊株およびmpkB破壊株において、cexAの発現量が有意に減少していた。また、コントロール株、mpkA破壊株、mpkB破壊株において、gpdAのプロモーターにより恒常的にcexAを発現したところ、mpkA破壊株とmpkB破壊株のクエン酸生産性がコントロール株と同程度にまで回復した。これらの結果から、白麹菌においてMAPキナーゼであるMpkAおよびMpkBがcexAの遺伝子発現制御を介してクエン酸生産を制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、白麹菌においてMAPキナーゼをコードするるmpkA、mpkB、およびmpkCを解析し、MpkAおよびMpkBがクエン酸生産の制御に関与することを示唆する結果を取得した。また、MpkAとMpkBは、クエン酸排出輸送体をコードするcexAの発現制御を介してクエン酸生産量をコントロールする可能性が示唆された。先行研究においてcexAは推定メチルトランスフェラーゼであるLaeAによりエピジェネティックに制御されることが分かっており、MpkAとMpkB、およびLaeAの関連性に興味がもたれた。以上の解析をさらに進めるためにも白麹菌のエピジェネティクスを解析する必要があり、クロマチン免疫沈降シーケンス解析の条件検討を進めたが、予想と反して超音波を用いた染色体DNAの効率的なせん断化条件を見出すことができなかった。一方、MpkAとMpkBについてはリン酸化プロテオームを行うことによりMpkAとMpkBによりリン酸化を受ける可能性がある転写因子やエピジェネティック因子をスクリーニングするための実験を進めることができた。以上のことから、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続いて白麹菌のコントロール株、mpkA破壊株、mpkB破壊株を用いてリン酸化プロテオーム解析を進めて、MpkAとMpkBによりリン酸化される転写因子およびエピジェネティック因子についてスクリーニングを行う。また、これまでクエン酸生産に関与する因子として解析してきた推定メチルトランスフェラーゼLaeAとサーチュインSirDに加えて、同様にクエン酸生産を制御する可能性が高い因子としてヘテロクロマチン化を促進すると推定される因子HepA(HP1のホモログ)に着目し、機能解析を実施する。また、白麹菌のアミラーゼAmyBの機能および生理的役割に関する解析を進める。さらに、白麹菌のエピジェネティクスに不可欠なクロマチン免疫沈降実験の条件検討を継続して実施する。特に染色体DNAのせん断には、超音波ではなく酵素あるいは酵素と超音波を組み合わせた手法を利用する必要があるかどうか検討する。
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