2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of reaction machinery for novel bacterial glycolipid synthases and their applications
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22H02261
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖野 望 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90363324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細菌スフィンゴ糖脂質 / 糖転移酵素 / 高次構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細菌由来のグリセロ糖脂質やスフィンゴ糖脂質の合成酵素に着目して、細菌糖脂質の合成マシナリーと生物機能の活用を目的とした基盤研究を展開する。本研究の成果は細菌糖脂質に着目した新奇抗生物質の開発や細菌糖脂質の新たな生物機能の解明に繋がる。 本年度は細菌由来の新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の同定とその高次構造解析を計画していた。 細菌由来の新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の同定に関しては、セラミドに4糖が結合した複合スフィンゴ糖脂質(Man-Gal-GlcN-GlcACer)を合成するSphingomonas paucimobilis に着目して、その糖転移酵素を同定することを目指した。二糖目のGlcNについては、まずGlcNAcが転移されてGlcNAc-GlcACerが合成された後に、GlcNAcが脱アセチル化されてGlcN-GlcACerを生じるという仮説を立てて研究を進めた。その結果、GlcNAcの転移酵素とGlcNAcの脱アセチル化酵素を同定することが出来た。また、α-GalCerの合成酵素に関してホモログの探索を進めたところ、新たに海洋細菌からα-GalCer合成酵素を同定することが出来た。 次に、新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析に関しては、これまでに角田教授との共同研究により、Sphingobium yanoikuyae 由来のGlcACer合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析により、その全体構造を明らかにすることに成功していた。そこで本研究計画では、高次構造情報に基づいたアミノ酸変異体の作成により、SyCer-GlcATの反応メカニズムや基質認識機構の解明に取り組んだ。その結果、酵素反応に関わる可能性がある幾つかのアミノ酸を特定すると共に、グルクロン酸の認識に重要なアミノ酸を特定することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は細菌由来の新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の同定とその高次構造解析に取り組んだ。 細菌由来のスフィンゴ糖脂質はセラミドに単糖(グルクロン酸やガラクトース)が結合したものが多いが、複数の糖が結合した複合スフィンゴ糖脂質も存在する。我々はセラミドにグルクロン酸とガラクトースを転移する細菌由来の糖転移酵素を同定しているが、それ以外の糖転移酵素の詳細は不明である。本年度は、セラミドに4糖が結合した複合スフィンゴ糖脂質(Man-Gal-GlcN-GlcACer)を合成するSphingomonas paucimobilis に着目して、その糖転移酵素の同定に取り組んだ。その結果、二糖目のGlcNの転移に関わる GlcNAc転移酵素とその脱アセチル化酵素の同定により、GlcN-GlcACerが合成される仕組みを明らかにすることが出来た。また、海洋生物からα-GalCerが見つかっていることから、海洋細菌を中心にしてα-GalCer合成酵素を探索したところ、海洋細菌由来のα-GalCer合成酵素を同定することに成功した。 一方、新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析に関しては、これまでに角田教授との共同研究により、Sphingobium yanoikuyae 由来のGlcACer合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析に成功していた。そこで本年度は、高次構造情報に基づいたアミノ酸変異体の作成を進めることで、SyCer-GlcATの基質認識機構に関するアミノ酸を同定することが出来た。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立と細菌由来のスフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析を計画している。 (1)細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立 本研究計画では、細菌スフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子を真核微生物で発現させることにより、細菌スフィンゴ糖脂質の微生物での生産基盤を確立する。我々は既に油糧微生物であるラビリンチュラ類を用いて、細菌由来α-GalCer合成酵素の発現によりα-GlcACerの生成を確認している。そこで、本研究計画では培養条件の最適化に加えて、前年度の研究で新たに取得した糖転移酵素の中から、ラビリンチュラ類での細菌型スフィンゴ糖脂質の高生産に適した酵素を選択することでその生産基盤を確立する。 我々はラビリンチュラ類の卓越した脂質生産能力に着目して脂質生産に関する研究を実施しており、細菌型スフィンゴ糖脂質の生産に関する研究基盤は整っている。一方、ラビリンチュラ類のセラミド部分の構造に関してはスフィンゴシンの構造が特殊であり、ヒトをはじめとする哺乳動物のスフィンゴシンと構造が異なる。我々はこのスフィンゴシンの修飾に関わる酵素の欠損株を作製しており、本欠損株を使用することで、ヒト型のスフィンゴシンを有する細菌型スフィンゴ糖脂質の生産にも取り組む。 (2)細菌由来のスフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析 これまでにSphingobium yanoikuyae 由来のGlcACer合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析に成功しているが、基質との複合体の解析には至っていない。本年度はUDP-GlcAやセラミドとの共結晶により、基質複合体の解析を目的として研究を進める。また、新たに取得した糖転移酵素の結晶化にも取り組む。
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Research Products
(6 results)