2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular basis of Streptomyces signaling-molecule-dependent regulatory pathway and activation of silent secondary metabolite biosynthetic genes
Project/Area Number |
22H02274
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荒川 賢治 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80346527)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 放線菌 / 二次代謝産物 / 生合成 / シグナル分子 / 制御遺伝子 / ゲノムマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、放線菌シグナル分子の誘導因子としての分子基盤の解明および汎用的二次代謝覚醒手法の開発を行う。まず、ブテノライド型シグナル分子生合成について、遺伝子破壊や標識化合物などを用いて明らかにする。次いで、SRB 受容体ホモログの相同性解析や遺伝子破壊を行い、ブテノライド型分子の認識残基などの構造情報や二次代謝誘導との相関性を解明する。そして高い相同性を有する放線菌ライブラリーから優先的に「シグナル分子 SRB の添加による休眠二次代謝覚醒」に取り組み、新規ゲノムマイニング手法の確立を目指す。2022年度は以下の課題を中心に展開した。 「シグナル分子制御系の分子基盤の解明(受容体の共通性・相違性)」 制御遺伝子群の多重遺伝子変異および強制発現による代謝プロファイルの変化を解析したところ、アクティベーターsrrYとリプレッサーsrrCの二重変異株で著量のγ-ブチロラクトン化合物の蓄積を見いだした。さらに、染色体上にコードされたSARP型アクティベーターを強制発現したところ、アゾキシアルケン化合物KA57-Aの蓄積を見いだした。 「SRB型シグナル分子による休眠二次代謝遺伝子の発現誘導」 放線菌にはシグナル分子合成酵素よりも過剰に受容体ホモログが存在しており、他のシグナル分子を認識する可能性が示唆された。本課題では、二次代謝誘導における SRB の汎用性を見いだすべく、各種単離株に対してSRB を添加し、非添加サンプルとの比較代謝プロファイル解析を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー (HPLC)で比較解析したところ、105株中27株において代謝変動を確認出来た。SRBにより誘導生産された二次代謝産物は、通常非生産である可能性が高いため、その構造・活性新規性が大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に実施した2課題のうち、まず「シグナル分子制御系の分子基盤の解明」に関し、通常培養では検出出来なかった化合物の著量蓄積を見いだし、論文として成果報告した (J. Biosci. Bioeng. 2022, 133:329-334)。 また、「SRB型シグナル分子による休眠二次代謝遺伝子の発現誘導」に関して、本研究室で保有している菌株に対しても有効な誘導能力をもつことを見いだした。このことは、シグナル分子による代謝誘導が可能であることを示唆しており、さらに各放線菌株のリセプターが構造の異なるシグナル分子を寛容に認識しうることも示している。代謝誘導で得られた化合物の構造決定・生物機能・生合成を調べるべく、シグナル分子の化学合成と当該菌株の大量培養を進めている。当該年度はHPLC, TLCによる代謝プロファイルの変化を指標に解析を進めたが、今後は様々な生物活性試験に供し、生理活性を有する二次代謝産物の代謝誘導を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上述の研究課題をより推進し、さらに以下の2課題についても着手し、シグナル分子制御系の包括的理解を通して未同定二次代謝産物の発掘に結びつける。 「SRB 生合成機構の全容解明」 「S. rochei 染色体上に見いだした新規シグナル分子合成遺伝子の解析」 2022年度から引き続き遂行する「シグナル分子制御系の分子基盤の解明」に関し、SARP型アクティベーターの発現ベクターの構築と形質転換隊の取得を目指す。また、「SRB型シグナル分子による休眠二次代謝遺伝子の発現誘導」に関して、放線菌分離源として、新たにインドネシアとの共同研究株を視野に入れている。さらに今後は様々な生物活性試験に供し、生理活性を有する二次代謝産物の代謝誘導を目指す。具体的には、抗菌活性、抗真菌活性、抗マラリア活性、抗トリパノソーマ活性、ミズクラゲ・ブラインシュリンプなどの水圏生物の形態分化誘導・阻害活性の検出を指標にして、新規生理活性物質の獲得を目指す。
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