2022 Fiscal Year Annual Research Report
食事誘導性肥満・耐糖能異常を防ぐ消化管内分泌系の適応機構
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22H02277
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比良 徹 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10396301)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 消化管内分泌系 / 食事誘導性肥満 / 耐糖能異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、【1】ラット消化管組織よりGLP-1産生細胞を単離し、その遺伝子発現を解析する手技を検討し、また、【2】GLP-1分泌に影響を与える食事成分の組み合わせが、GLP-1分泌や血糖値に与える影響を検討した。 【1】において、消化管上皮において1%程度の割合で散在する消化管内分泌細胞に含まれるGLP-1産生細胞を単離するため、まず消化管上皮細胞を分離する手法を検討し、GLP-1抗体を用いた免疫染色により、ラット回腸組織よりGLP-1産生細胞を含む上皮細胞を分離することが可能となった。これより、フローサイトメーターを用いてGLP-1産生細胞を単離することを検討したが、上皮細胞におけるGLP-1産生細胞の割合が少ないこと、単離したGLP-1産生細胞の絶対数が少ないこと、などから遺伝子発現解析に必要な量、質のRNA抽出が困難であった。そのため、さらなる条件検討が必要となった。 【2】において、マウスにおいてGLP-1分泌を促進することが報告されている脂肪酸であるα-リノレン酸が、他の栄養素刺激に対するGLP-1分泌に影響を与えるかを検討するため、を、α-リノレン酸単独またはデキストリンと共投与し、投与後の血中GLP-1濃度、グルコース濃度を測定した。その結果、α-リノレン酸およびデキストリンでの単独投与では、血中GLP-1濃度上昇は観察されなかったが、α-リノレン酸とデキストリンの共投与により、血中GLP-1濃度の上昇傾向が見られた。この結果より、異なる栄養素の共存がGLP-1分泌を相乗的に高める可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた単離GLP-1産生細胞での遺伝子発現解析が困難であった点については、やや遅れているが、あらたな発見があったことから、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満誘導食によるGLP-1分泌増大が、耐糖能悪化に対して防御的役割を持つのならば、肥満誘導性のない食品成分でGLP-1分泌増大を誘導することで、肥満や耐糖能異常の予防や改善に資すると期待できる。申請者はこれまで多様な食品成分が一過性のGLP-1分泌促進作用を示すことを見出しており、これらの素材の持続摂取によるGLP-1分泌応答への影響を、培養細胞ならびにラットにおいて評価する。さらに、これにより肥満や耐糖能異常を抑制できるかを検討する。 糖尿病モデルラット(Goto-Kakizaki (GK) ラット)では、肥満誘導食(高脂肪高ショ糖食)を長期間摂取させてもGLP-1分泌応答が増大せず、耐糖能が更に悪化する。このモデルラットと、肥満誘導食摂取によりGLP-1分泌応答が増大する正常ラットの消化管、GLP-1産生細胞において遺伝子発現の差異を調べる。肥満誘導食による変動が見られない分子が正常ラットにおける肥満誘導時のGLP-1分泌増大に関わるものと考えられる。
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