2023 Fiscal Year Annual Research Report
食事誘導性肥満・耐糖能異常を防ぐ消化管内分泌系の適応機構
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22H02277
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比良 徹 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10396301)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 消化管内分泌系 / 食事誘導性肥満 / 耐糖能異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、GLP-1分泌を促進することが知られる脂肪酸であるα-リノレン酸を豊富に含有するえごま油を、【1】食事誘導性肥満モデルラット、および【1】糖尿病モデルラットに長期摂取させて、GLP-1分泌や耐糖能へ与える影響を検討した。 【1】において、ラードを主とする高脂肪食に対し、一部および大部分をえごま油で置換した高脂肪食をラットに長期摂取させた。その結果、高脂肪食の油脂の大部分をえごま油に置換すると、栄養素応答性のGLP-1分泌が増大する傾向が見られた。食後血糖の改善は見られなかったが、空腹時血糖の改善傾向は観察された。さらに血中脂質濃度の低下作用が見られた。これらの結果から、高えごま油食の長期摂取はGLP-1分泌を増大すること、空腹時の糖代謝や脂質代謝を改善する可能性が示唆された。 【2】において、糖尿病モデルラット(Goto-Kakizakiラット)において、普通食に含まれる大豆油をえごま油に置換して長期摂取させた。食事負荷試験において、GLP-1分泌応答への影響は見られなかったが、血糖上昇の抑制ならびにインスリン分泌の増大傾向が見られた。また、インスリン負荷試験においては、普通食摂取群に比べてえごま油摂取群の方がインスリン投与により血糖がより低下し、インスリン感受性が改善していることが示唆された。これらの結果より、えごま油摂取は、遺伝的糖尿病モデルにおいて、GLP-1分泌促進には依存せずに、耐糖能を改善することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
えごま油の新たな効果を提示できた点において、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
食事誘導性肥満モデル、糖尿病モデルにおいて、消化管のGLP-1産生を調べるとともに、栄養素感知、輸送、代謝などに関わる分子の発現の変動を消化管部位別に解析する。また、耐糖能の改善において重要な膵臓についても、関連因子の解析を進める。
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