2022 Fiscal Year Annual Research Report
嗜好味受容体におけるリガンド選択性・感受性を決定する因子の構造活性相関による同定
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22H02282
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三坂 巧 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40373196)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 食品 / 食品機能 / 嗜好性 / 味覚受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、嗜好味受容体におけるリガンド選択性・感受性に、受容体内部のどの部分が関与しているのかを、構造活性相関解析によって実験的に明らかにすることを目的とする。更に、得られた知見をもとにして、点変異導入による高感度型ヒト味覚受容体の創出にも挑戦する。 うま味受容体のリガンド感受性については、我々が以前に行ったヒト・マウス受容体の比較から、リガンド結合ドメインとは離れたドメインを介したアロステリック制御機構の存在が明らかになっている。そこで、まずヒト・マウス受容体の比較から見出されたヒトT1R1の細胞外領域において受容体活性調節に関わる6残基を対象に、それぞれを複数種類のアミノ酸残基に変異させた網羅的な点変異体シリーズをデザインし、これらの点変異導入が受容体の活性の強さやリガンドに対する感受性に与える影響を評価した。 その結果、細胞外領域の蝶番部分の入り口付近に位置するK379とR307において、側鎖の電荷やアミノ酸サイズを変化させた場合に、グルタミン酸に対する応答活性(応答強度または応答感度)が上昇した点変異体が複数得られた。特に電荷を変化させた場合に受容体活性が顕著に上昇する傾向を示したことから、この2残基の側鎖に存在する陽電荷が、ヒトうま味受容体の活性調節に強い影響を与えることが予想された。 一方で、細胞外領域の内側に位置するM320の変異体については、T1R1膜貫通領域に作用する人工うま味物質に対して高感度に応答する変異体が存在していた。この現象については、側鎖に水酸基を含む残基への変異導入によって新たに水素結合が形成され、受容体構造に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
嗜好味受容体におけるリガンド選択性・感受性に、受容体内部のどの部分が関与しているのかを、構造活性相関解析によって実験的に明らかにすることを目的としていたが、解析の途上で、点変異導入により高感度型ヒトうま味受容体を新規に作出することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、活性が変化した変異導入部位については、受容体の立体構造モデルにおける各残基の相対的な位置情報も勘案しつつ、それぞれの残基が受容体活性に果たす役割や、変異導入されたアミノ酸残基の意義の考察について実施していく。
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