2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structure and texture induced by the glass to rubber transition of glassy powder-lipid mixtures
Project/Area Number |
22H02288
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川井 清司 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (00454140)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ガラス転移 / 固着 / 食感 / 非晶質粉末 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は各種素材を混合し、温度・水分制御によって食品として成立する構造体を自発的に作り出すためのプロセス設計を検討することである。 今年度(1年目)は油脂含有ガラスマトリクスモデルの調製とその物性解明を行った。非晶質粉末としてデキストリンおよびアミロースを用いた。非晶質粉末の水分活性は飽和塩法によって調整した。各素材の水分活性とガラス転移温度との関係は必要に応じて示差走査熱量計によって調べた。油脂にはトリオレイン(液体)、トリラウリン(固体)、ラウリン酸を用いた。ガラス化粉末に対して油脂を様々な割合で混合し、様々な温度および水分活性で保持した。これにより、混合粉末中の非晶質素材はガラス状態かラバー状態かの状態に、油脂は固体か液体かの状態になる。その後、試料を常温に戻し、熱物性を示差走査熱量計によって調べた。またふるいを用いた固着度測定により粉末の構造形成について調べた。 非晶質素材(デキストリン)をラバー状態で保持し、その後常温に戻してガラス状態にしたとき、非晶質素材中では固着が発生し、構造体を形成することが明らかになった。しかし油脂(トリラウリン)含量の増加によって構造体は形成されなくなった。油脂を液体状態で保持し、その後常温に戻して固体状態にしたとき、油脂含量の高い試料では構造体を形成することが明らかになった。一方、非晶質素材(アミロース)をラバー状態で、油脂(ラウリン酸)を液体状態で保持したとき、アミロースとラウリン酸とは自発的に構造体を形成した。示差走査熱量測定により、この構造体は包接複合体であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的に物流が滞った影響を受け、備品として購入した卓上顕微鏡の納期が当初予定より大幅に遅れてしまった。したがって、今年度は卓上顕微鏡を用いた実験を実質的に進めることはできなかった。研究一年目ということで、実験系を確立するまでに時間を要したが、試行錯誤の末、現在は順調にデータを取り進められている。特に非晶質アミロースとラウリン酸の混合粉末に関する研究は大きく進展し、その研究成果は原著論文として国際誌に投稿した。当初予定から研究が遅れている部分と進展している部分とがあり、全体としては概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を踏まえて、今後は非晶質高分子としてデキストリンを、油脂としてトリラウリンを用いた実験を中心に進めていく。今後は非晶質粉末としてデキストリン粉末だけでなく、デキストリンにグルコース(単糖)を加えた非晶質混合粉末を新たに用い、そこにトリラウリンを混在させ、温度・水分を制御して保持したときの構造形成について検討する。卓上顕微鏡が導入されたため、今後は新たに各試料のマトリクス構造に関する知見を得ることができるようになる。しかし、有機物は一般に帯電しやすく、観察中にチャージアップすることが想定されるため、小型の金属蒸着装置の導入を検討する。また、マトリクスの発達状況を観察し難い場合は事前に脱水並びに脱油処理を行うことで改善を図る。
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