2023 Fiscal Year Annual Research Report
Germination Mechanisms under Iron Toxicity in Direct Seeded Rice on Acid Sulfate Soils
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22H02322
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩野 克宏 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20610695)
高橋 宏和 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50755212)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イネ / 鉄過剰 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯沿岸部低湿地では酸性硫酸塩土壌に起因する鉄過剰障害により水田のイネが甚大な被害を受ける。本研究では、出芽期イネにおける鉄過剰障発生メカニズム及び、鉄過剰耐性メカニズムの解明を行うことを目的とした。まず、出芽期イネの鉄過剰ストレス応答形質の調査およびスクリーニング系の構築を目的として、indica, 温帯・熱帯japonica, ausからなる20品種について、3段階の鉄濃度の水耕養液を準備して出芽期の鉄過剰耐性の遺伝的変異を調査した。成長量と枯死率を総合して選抜の基準となる形質を決定、有望な耐性品種を2品種同定した。出芽期の鉄過剰耐性の遺伝的変異について、幼苗期試験の耐性の遺伝的変異と相関は低く、両者は別々の形質が関係している可能性が示唆された。また、鉄過剰ストレスからの成長回復過程についても詳細な解析を進め、鉄過剰ストレス耐性の高い台中65号は、耐性の弱いCiherangよりも、ストレス緩和後の根の再成長応答に優れることで回復時の蒸散量が多く、このことによって乾物成長が高いことが示唆された。さらに、昨年度に続き、イネ根の酸化力と鉄過剰耐性の組織生理学的観察に必要な基盤技術の開発を進めた。具体的には、定量的酸素イメージング法を改良し、幼苗期のイネ根の観察が可能なサイズ(27 × 16 cm)まで、酸素計測面を拡大することに成功した。このセンサ面は従来の10倍の大きさであり、我々の知る限りでは、植物科学分野の2次元酸素オプトードとしては世界最大サイズである。塗布面が広くなるため、Ptを含む高価な色素試薬の量を減らす必要性もあった。そこで、色素とマトリックスの配合比を比較検討し、より高感度かつ色素使用量を1/4に減らす、最適化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、出芽期の鉄過剰耐性に関する品種間差異の解析が進んでいる。また、イネ根の酸化力と鉄過剰耐性の組織生理学的観察に必要な基盤技術の開発については、鉄過剰土壌におけるイネ根圏の酸素と鉄酸化物のイメージング技術の開発が、当初の計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、出芽期に鉄過剰ストレスを受けた植物について、酸化鉄プラーク量における品種間差異の有無を明らかにする。サンプリング後の根をDCB溶液に浸し、酸化鉄プラークを溶解し鉄プラークおよび根組織の鉄濃度を測定する。続いて、鉄過剰ストレス下で生じる根圏の酸化鉄プラーク形成と酸素動態の品種間差異を明らかにする。出芽期のイネは根量が少なく、その成長は鉄過剰の影響を強く受ける。鉄過剰耐性品種は伸長する根への酸素供給能力が高く、鉄過剰下で素早く酸化鉄プラーク層を形成できる(このことによって過剰量の鉄の植物体内流入をある程度防げる)のではないかと期待される。根圏の酸素動態測定については定量的酸素イメージング法を用いる。これまでの研究の進捗によって、2次元オプトード法の応用で、根圏の酸素動態だけでなく、精度良く鉄プラークをイメージング、定量することが可能になりつつある。そこで今年度は、開発した手法を利用して、鉄過剰条件におけるイネの根圏酸化状態と鉄プラーク形成の品種間差異について、生理的データを収集する予定である。
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