2022 Fiscal Year Annual Research Report
カキのゲノム進化に基づく果実の形状多様性獲得モデルの構築
Project/Area Number |
22H02339
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 剛士 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (50611919)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川勝 泰二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (30435614)
尾上 典之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (50613121)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 倍数化 / カキ / ゲノム進化 / 果実形状 / 全ゲノム解読 / バイオインフォマティクス / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度までは栽培ガキの近縁二倍体野生種マメガキを参照ゲノムとして用いていたが、新たに、PacBio HiFiリードを用いたアセンブルおよびマニュアルアンカリングにより、六倍体栽培ガキ「太秋」の染色体レベルでの全ゲノム配列を決定した。これを新たな参照ゲノム情報として、多様なカキ品種群におけるGWAS・eGWAS解析および集団構造解析を行った。この結果から、栽培ガキでは、品種群ごとに独自の果実形状多様性を獲得しており、その分子機作も系統群ごとに異なっている可能性が示唆された。一方、この決定分子機作には潜在的な共通性があり、いずれもサイトカイニンシグナルに応答する経路を基礎とするものであり、六倍体化によって得られた新しい応答系を参照している可能性も考えられた。一方、カキ品種群の集団構造はランダムに分布しており、果実形状主成分軸と相関する構造軸やクラスタ化は見られなかった。 栽培ガキ主要品種である「平核無」とその枝変わりでコマ型果実形を示す「孝子丸」における比較経時的トランスクリプトーム解析から、細胞分裂や障害応答性因子、サイトカイニンシグナル経路に関与する因子群(AP3, HB4, NAC29など)を原因因子候補として捉えており、これらの因子を中果皮生育期特異的に発現するプロモーター群に接続し、タバコでの異所的発現を試みた。その結果、特にAP3およびHB3において、中果皮相当部の細胞分裂に変化を生じるとともに、いずれの系統に置いても単為結果性の誘導が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していた「果実形状変化・多様性」を決定する分子的要因に関する実験系はおおよそ順調に遂行されており、新たに六倍体栽培ガキの全ゲノム配列の決定もあって、優良な候補因子群の同定にも至っている。GWAS解析を中心とした集団遺伝学的解析では、カキ品種群の集団構造を明らかにしたうえで、品種ごとに独立して果実形状多様性に影響を与える因子が出現した可能性を示唆する結果が得られており、進化学的な観点からも、栽培化と倍数化の両者を捉えた新規多様性獲得メカニズムに言及できるような結果が得られている。点変異を期待させる枝変わり系統間での比較解析においても、生理学的な観点から上述した可能性を支持するような結果が得られている。 他方、倍数化自体を起点とした進化選抜圧に関する解析は、少々難航しており、これには六倍体栽培ガキの近縁二倍体野生種において多様な遺伝資源を活用することが出来ないことが一因となっている。この状況を踏まえて、栽培ガキだけでなく、他の高次倍数体種(ロウヤガキ・アメリカガキの一部)と幅広い二倍体種の俯瞰的な比較解析によって、倍数化自体による生理学的な応答変化に目を向けた計画を再考している状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を考慮して、栽培ガキの果実形状多様性を駆動すると考えられる候補因子群については、タバコ・トマト・早咲きキウイフルーツを用いた形質転換系、および、カキ果実を用いたトランジェントレポーターアッセイによってその分子機能の特定を行っていく予定である。 倍数化に起因するエピゲノム再編の可能性を吟味するために、栽培ガキの幅広い品種群と、近縁二倍体種であるマメガキ・アブラガキの多様な系統において果実サンプルでのDNAメチローム解析およびH3K27, H3K9の各種メチル化レベルを明らかにするためのChIP-Seq解析を計画している。 また、倍数化自体に起因した生理学的な応答の変化を明らかにするために、栽培ガキ品種群に留まらず、比較的近縁関係にある高次倍数体種(ロウヤガキ・アメリカガキの一部)と二倍体種(マメガキ・アブラガキ・トキワガキ・セッコウガキなど)の果実において、開花直後の細胞分裂期におけるトランスクリプトームデータを収集し、高次倍数体群-二倍体種群間で共通した変動遺伝子群を同定し、その潜在的な律速経路の同定を目指す。
|
Research Products
(4 results)