2022 Fiscal Year Annual Research Report
花き類の高濃度CO2への順化反応の機構解明とそれに基づくCO2施用の効率化
Project/Area Number |
22H02340
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
稲本 勝彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, グループ長補佐 (50223235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 元章 京都大学, 農学研究科, 教授 (40164090)
後藤 丹十郎 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (40195938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高濃度CO2順化 / 生育中期施用 / バラ / ユリ / イチゴ / トルコギキョウ / ガーベラ / アーチング |
Outline of Annual Research Achievements |
バラにおいて、完全人工気象室内の強度の光供給条件(300μmol m-2 sec-1 PPFD 12時間連続/日)下かつ高濃度養液(EC 1.5)施用下での栽培で高濃度CO2施用を行ったところ、高濃度CO2への順化が認められなかった。アーチングバラにおける高濃度CO2順化のマイナスの影響を回避するため、栽培施設内で光合成産物の転流率が大きくなるシュートの伸長開始2週間目から800ppmの高濃度CO2施用を3週間(生育中期施用区)行い、連続なりゆき区および連続施用区との間で収量を比較した。連続なりゆき区および連続施用区との間には切り花収量に差がみられなかったのに対し、生育中期施用区では切り花収量がなりゆき区に対して増加した。また、高CO2順化の典型的な反応である葉の厚みの増加はほとんど認められなかった。 ユリについて、発蕾後に高濃度CO2(900ppm)下で栽培し、光合成特性を評価した。高濃度CO2施用下で栽培したユリは、なりゆき濃度下での栽培したものと比較して、同じ環境条件下における光合成速度が低下し、高CO2への順化反応が存在することが示唆された。 イチゴを用いて、高濃度CO2施用によるCO2順化様相を調査した。イチゴにおいては、品種‘かおりの’を用いて、CO2施用区(濃度600-1500ppm)と無施用区(450ppm)を設けた。11月7日からCO2施用を開始し、処理開始30、60、90日後に光合成速度を調査した。処理30日後までは、CO2順化は起きていなかったが、施用区において処理60日以降では、果実が着果していてもCO2順化が見られた。トルコギキョウ、ガーベラでは、今後の実験に適した品種選定を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バラにおいて、完全人工気象室内ででの栽培で高濃度CO2を行った場合、高濃度CO2順化が認められなかった。これは、栽培条件が強度の光供給条件かつ高濃度養液施用下であったことが理由と類推され、この点について検討をする必要が考えられた。アーチングバラの高CO2順化反応の原因のひとつがシンク強度の低さであることが類推されたことから、収穫枝のシンク強度が最も強くなる成育中期のみでCO2施用を限定的に実施することで、高CO2順化の発生を回避して高いCO2施用の効果を得られることを示した。 ユリについては、強度のシンクである花蕾の有無の光合成への影響について評価する必要があると考えられた。 イチゴでは、着果していた場合でも、高濃度施用を続けると処理開始60日後においてCO2順化が生じることが確認できた。 トルコギキョウ、ガーベラでは、実験に適した品種選定を行ったが、その際に破壊調査をしたため、高濃度CO2施用によるCO2順化様相を調査できなかった。 以上、研究の進行はおおむね順調であるが、新たに検討を進めるべき問題点も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
バラにおいて、光強度および養液濃度を変えた条件下で栽培し、高CO2への順化様相を調査し、順化反応が発生する環境条件を明らかにする。その上で、短時間(時間単位)および長時間(日単位)のCO2濃度の変化に対するCO2取り込みについて評価する。 ユリにおいては、強度のシンクである花蕾の有無の光合成への影響について評価する。また、高濃度連続CO2 施用の葉の組織形態への影響を調査する。 イチゴにおいては、果実摘果区と無摘果区をもうけ、シンク強度とCO2順化程度の違いとの関係について調査する。また、品種による違いも調査する。加えて、CO2施用による葉の形態的な変化(葉厚、気孔数、気孔の大きさなど)も調査する。 トルコギキョウとガーベラに関しては、昨年度の結果から得られた品種を用いて、高濃度CO2施用によるCO2順化様相を調査する。また、摘蕾区と無摘蕾区を設け、シンク強度とCO2順化程度の違いとの関係について調査する。また、CO2施用による形態的な変化(葉厚、気孔数、気孔の大きさなど)も調査する。 以上を検討した結果に基づき、効率的なCO2施用法についての提案を行う。
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Research Products
(2 results)