2023 Fiscal Year Annual Research Report
選択的害虫防除に向けた種選択能を有したニコチン性受容体標的薬剤設計の分子基盤研究
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22H02350
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
伊原 誠 近畿大学, 農学部, 准教授 (30466031)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ニコチン性アセチルコリン受容体 / ネオニコチノイド / 選択毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、主要な殺虫剤であるネオニコチノイド系殺虫剤や殺虫性糸状菌代謝産物の分子標的である。ネオニコチノイドはミツバチの蜂群崩壊症候群や環境生物への悪影響が取り沙汰されるようになり、批判の矛先が向けられている。一方、糸状菌代謝産物は、選択毒性を有する化合物が種々知られているが、選択毒性が生じる分子メカニズムの理解が限られている。そこで高度な選択毒性を有する薬剤の開発にむけた基盤研究が重要となっている。研究計画年度2年目は、1年目に引き続き「昆虫類のCys-loop受容体の機能発現方法および薬剤評価系の確立」と「Cys-loop受容体を標的とする殺虫剤の受容体種間選択性の評価」の2テーマに取り組むとともに「昆虫のnAChRの構造解析研究」を開始した。 ニコチン性アセチルコリン受容体は5つのプロトマーから構築されることから、機能的受容体を再構築できるプロトマー(サブユニット)の組み合わせと、再構築に適した補助因子の組み合わせや量比を検討した。その結果、機能的発現が確認された受容体に対するネオニコチノイドや関連化合物の作用特性を明らかにした。また、補助因子は基本的な受容体の薬理学特性には有意な影響を与えることなく、構築される機能的な受容体数に有意な影響を与えることが示された。本実績により、選択毒性をチューニングするための計算科学および昆虫の立体構造解析に向けた受容体の構築条件の本格的な検討が可能となったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり、新たな昆虫のCys-loop受容体の取得と機能的発現可能な受容体サブユニットの組み合わせを明らかにすることが出来ている。また、機能的発現が可能となった構造解析に向けた受容体コンストラクトの作成と、構造解析に向けたタンパク質の精製条件の最適化も順調に進んでいる。これらを踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、着実に研究を遂行していく。 2024-2025年度は、昆虫のnAChRの構造解析研究にウェイト移し、これまで誰も明らかにできなかった昆虫のnAChRの立体構造を明らかにするとともに、相互作用メカニズムが解明されていない糸状菌代謝産物との複合体の構造解析にも挑戦する。
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