2022 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫は、如何にして体節特異的に体液環境へ応答し、形質を多様化させているのか?
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22H02355
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
金児 雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90633610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 圭子 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (30401938)
伴野 豊 九州大学, 農学研究院, 教授 (50192711)
藤井 告 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50507887)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 蛹変態 / カイコ |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫は開放血管系であり、全ての細胞が同一の体液に曝される。体液中のホルモンの刺激によって幼虫から蛹へと変態するが、このとき幼虫型の細胞は細胞死により除去されるか、もしくは再構成され蛹型になる。同一の体液に曝されるにも関わらず、細胞によって異なる変化が誘導される。この要因については、これまでほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、モデル昆虫であるカイコを用いてこの謎を明らかにする。そのことにより、一般生物学の進展への寄与および新たな害虫防除技術への応用の基盤を作ることを目的とする。まず体液環境への応答の分子機構の解析のため、栄養条件またはホルモン状態を操作し、そのことによる遺伝子発現への影響を検証した。具体的にはRNAシークエンスにより、発現した全ての遺伝子を検出、定量化し、条件間での比較解析を行なった。その結果、分子機構に関わることが期待される多くの候補遺伝子を得ることができ、今後の検証への道筋ができた。またカイコ変異体に対する解析も行い、この変異体においては、脱皮ホルモンの産生の負の制御が関わっていることを明らかにした。この制御機構には、少なくても酵素遺伝子群の転写レベルでの制御が関わる可能性を見出した。一方、これらの解析で得られた体液環境への応答を示す遺伝子群の機能の解析のためには、ゲノム編集カイコが有用である。そこでカイコゲノム編集技術についても試行を重ねており、安定的なゲノム編集が行えるようになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は体液環境への空間特異的な応答を生み出す遺伝子の探索に焦点をあてて解析を進めた。その結果、多くの候補遺伝子を得られ、今後の研究推進のための材料を得ることができた。また変異体の解析についても、ホルモンの関係性を検証することができ、一定の進展が得られた。ゲノム編集技術についても試行を重ね、良好な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
多数の候補遺伝子がRNAシークエンスにより得られたことから、RNAシークエンスデータのうち、体液環境の変化に伴う発現量変化、遺伝子のアノテーション情報をさらに精査することで、候補遺伝子の絞り込みを行う。絞り込まれた遺伝子について、より定量性が高い定量PCRを用いて発現量の変化について解析を行う。加えて、体の部位による発現状態の差異、発育に伴う発現量の変動を解析する。このことによって、候補遺伝子のさらなる絞り込みを行う。また順次、培養による直接的な体液環境への応答の確認も行う。明確な体液環境への応答が認められた遺伝子から、RNAiによる機能の検証も始める。一方、変異体に対しては、その原因遺伝子の特定に向けて所属染色体の確認を行う。そのために、ゲノム配列が変異体とは異なる純系系統との交配を行う。その後、配列の差異を利用したPCRを行うことで、責任染色体について確証を得る。十分な確認ができない場合、ゲノムシークエンスを行う。これらの解析を通じて、本研究の目的である開放血管系での細胞特異的な体液環境応答の分子機構の解明を行う。
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Research Products
(2 results)