2022 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌ボルバキアによるウイルス抑制・宿主操作の基盤となる分子機構の解明
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22H02362
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大手 学 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20386717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ボルバキア / ウイルス / RNA / ヤブカ / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
非常に多くの昆虫種に共生するボルバキアが、宿主を操作する仕組みの解明を行った。我はこれまで、宿主細胞内でボルバキアが宿主RNAと翻訳制御因子の相互作用を阻害することを明らかにしてきた。そこで、ボルバキアはRNAウイルスの増殖を阻害することが知られていることから、ウイルスRNAもボルバキアによる制御を受けているという仮説を立て、検証を行った。RNAウイルスのゲノムは複雑な二次構造を形成し、RNAポリメラーゼと相互作用することで複製することが知られている。そこで、ボルバキア共生ヤブカ培養細胞にデングウイルスを感染させ、ウイルスゲノムRNAの構造をDMS-seqにより解析した。その結果、ボルバキア共生細胞では、ウイルスゲノムRNAの二次構造の形成不全が引き起こされていた。興味深いことに、この形成不全は細胞から抽出した、タンパク質を含まないRNAでも観察された。そのことから、ボルバキアによってRNA自体の性質が変化している可能性が示された。そこで、ウイルスRNAの性質を詳細に調べるため、細胞内よりデングウイルスRNAを高純度で生成する手法の開発を目指した。バックグラウンドを抑えるために、デングウイルスRNAに特異的に結合するビオチン標識オリゴヌクレオチドを作成し、数10種類をそれぞれ低濃度で使用したところ、約5,000倍に濃縮することができた。今後、精製されたウイルスRNAの詳細な解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボルバキアがRNAの性質を変化させるという新たな知見を得た。また、その成果を発展させるための新たな解析手法を開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ボルバキアによって引き起こされるRNAの変質について、特にRNAに誘導される修飾に着目し、その変化を捉える。また、細胞内からRNA-タンパク質複合体を単離する手法を利用して、ボルバキアが標的とするRNAに含まれる宿主とボルバキアのタンパク質の網羅的同定を行う。ウイルスと宿主のRNAの解析を通して、ボルバキアによる宿主操作の礎となる分子機構の同定を目指す。
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Research Products
(2 results)