2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H02363
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
新屋 良治 明治大学, 農学部, 専任准教授 (30802798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 一輝 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (90842071)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 性決定 / 線虫 / 糖 / tra-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコブセンチュウ性分化に関わる遺伝子群を理解するために、トマトの根に感染後7日目の性未分化幼虫と、11日目の雌雄2-3期幼虫を根から解剖学的に取り出し、RNA-seq解析に供した。比較対象として、植物体感染前のネコブセンチュウ感染態2期幼虫も加えた。各3反復ずつ遺伝子発現プロファイルを取得し、主成分分析を実施した結果、4種類のサンプルそれぞれにおいて明確なグループが形成された。ネコブセンチュウにおいてその発現量に雌雄差が確認された遺伝子の中には、他種線虫において性決定に関与するものがあり、複数の転写因子も見出された。また、ネコブセンチュウは植物から摂取する糖を性決定のトリガーとして利用していることを示唆する結果を既に得ているが、モデル線虫C. elegansにおける主要グルコーストランスポーターのオルソログの発現がネコブセンチュウの雌雄で大きく異なることが明らかになった。次に、ネコブセンチュウtra-1遺伝子の機能解析を実施する準備に着手した。tra-1遺伝子はネコブセンチュウの近縁種において、性決定遺伝子としての機能を有することが明らかになっている。公開されているゲノム情報によるとネコブセンチュウは複数のtra-1オルソログを有しているが、主要tra-1と思われる遺伝子配列が他種線虫に比べ短く、ゲノム解析時の遺伝子予測にミスが生じている可能性が考えられた。そのため、今回ネコブセンチュウからcDNAを合成し、完全長配列の取得を試みた。その結果、実際にゲノム解析時の情報が誤りであることが明らかになった。現在では、このtra-1遺伝子の性決定における機能を調べるべく、ベンサミアナタバコにおけるVIGS系を用いた実験系の確立に取り組んでいる。現状、ネコブセンチュウがベンサミアナタバコにおよそ20%程度の寄生率を有することを確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、ネコブセンチュウ性決定候補遺伝子tra-1を起点として、他の性決定候補遺伝子の探索を開始した。しかし、現在公開されているゲノム配列で2つのtra-1遺伝子とされている遺伝子が、実は1つの遺伝子なのではないかという疑念が生じた。そのため、念の為、現在保有している線虫株のtra-1全長配列をクローニングし確定作業を行なった結果、ゲノム情報が誤りであったことに気がついた。遅れは生じたものの今後の研究においては重要な実験であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンサミアナタバコにおけるVIGS実験系を用いたネコブセンチュウtra-1遺伝子の機能解析を行う。まずはそのためのプラスミドを作製する。本実験手法においては、tra-1遺伝子の機能が部分的に欠損することが予測されるため、結果として完全なオス線虫の出現が促されるだけでなく、雌雄の中間的な性質を持つ個体が出現する可能性もある。表現型の判別時には、微分干渉顕微鏡を用いて、体細胞および生殖細胞の両方に着目して観察を行う。本実験においてtra-1遺伝子が実際にネコブセンチュウにおいて、性決定に関与することを明らかにしたあと、tra-1の結合因子に着目し性決定に関与する他の性決定遺伝子候補のリストアップに取り組む。
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Research Products
(14 results)