2022 Fiscal Year Annual Research Report
スギ・ヒノキに共生する菌根菌の多様性と林床植物との菌根菌ネットワークの解明
Project/Area Number |
22H02382
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松下 範久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00282567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
練 春蘭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40376695)
楠本 大 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (80540608)
坂上 大翼 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90313080)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌根 / 共生機能 / 宿主特異性 / 人工林 / スギ / ヒノキ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,スギやヒノキと共生するAM菌の種多様性の解明,両種の生育に対するAM菌の共生効果の解明,両種と林床植物の間の菌根菌ネットワーク(CMN)の実態の解明を目的とする。2022年度の主な成果は以下の通りである。 東京大学千葉演習林,秩父演習林,田無演習林内の調査地から採取したスギ・ヒノキの根と周辺土壌のそれぞれからDNAを抽出し,次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンス解析により,根内と根外のAM菌のOTU(操作的分類単位;以下,「種」として記述)組成を調査した。その結果,合計で1443種が検出され,いずれの調査地においても,スギとヒノキともに根内よりも根外の方が種数が有意に多く,根内と根外のAM菌群集は有意に異なっていた。検出頻度が高かった種のうち,90種が有意に根内に多く存在する種,177種が有意に根外に多く存在する種であった。また,本研究で検出された15属のAM菌のうち,Acaulospora属とGlomus属は根内に,Paraglomus属とRedeckera属は根外に有意に多く存在した。以上の結果から,スギ・ヒノキに共生するAM 菌は分類群により定着戦略が異なり,根内に多くの菌糸を定着させて根外には菌糸をあまり伸ばさない分類群と,根内にはあまり定着せずに根外に多くの菌糸を伸ばす分類群が存在することにより,根内と根外のAM 菌群集構造が異なることが示唆された。 一方,スギとヒノキが混植された調査地ではAM 菌の群集構造に宿主間で有意な違いはなく,スギのみ,ヒノキのみが単植された調査地では群集構造に宿主間で有意な違いがみられた。また,有意にスギと関連する種が4,ヒノキと関連する種が4,両種のどちらにも関連する種が13検出された。これらの結果から,スギとヒノキに特異的な種は少なく,両者が共存する場所ではAM菌を共有していると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な3つの目的のうち,AM菌の多様性の解明については,DNA抽出方法の再検討などの計画の変更はあったものの,スギとヒノキの個体ごとのAM菌の種組成を調査し,その結果を論文にまとめて投稿するなど順調に進展している。また,AM菌群集の季節変化やAM菌群集への間伐の影響については,サンプリングや実験・解析が順調に進んでいる。AM菌の共生効果の解明については,まだ菌株数は少ないもののAM菌の単離を着実に行っている。菌根菌ネットワーク(CMN)の実態の解明については,調査地を設定してサンプリングを行うなど順調に進展している。以上のように,研究全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主な3つの目的のうち,AM菌の多様性の解明とCMNの実態の解明については,今後も,当初の計画通り研究を推進する。AM菌の単離については,方法を検討して,現在よりも効率よくAM菌を単離する方法の確立を目指す。
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