2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H02403
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉田 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30447510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 泰幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60335015)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 褐色腐朽 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の戸建て住宅の多くは木造であり、それらは例外なく腐朽のリスクに晒されている。木材腐朽菌の中でも褐色腐朽菌は我が国の木造建築物に腐朽被害をもたらす最も主要な害菌である。褐色腐朽過程においては、木材細胞壁中のヘミセルロースが腐朽初期に急激に分解され、次いでセルロースの分解が進行し、最終的に完全分解に至る。一方、リグニンは化学的な変質が引き起こされるものの低分子化せず、高分子体として残存する。この木材細胞壁構成成分の変化は褐色腐朽を特徴付けるものの一つとし て古くから知られているが、その成分変化がどのようなメカニズムで導かれ、それが褐色腐朽菌の生存戦略の中でどのように位置付けられているのかを完全に説明できているとは言い難い。以上の背景を受け、本研究課題では「褐色腐朽菌が引き起こす木材細胞壁構成成分の変化は、どのようなメカニズムで生じ、それが菌にとってどのような意味を持つのか?」を明らかにすべく、研究を実施している。特に本年度は、褐色腐朽菌において見出された新規のセルロース結合ドメインの吸着メカニズムに関する調査を実施し、その吸着に重要なアミノ酸などが特定された。また、木材組織中での吸着部位の調査により、新規の結合ドメインが吸着する可能な木材組織構造に関する情報を得た。さらに、褐色腐朽菌が有するヘミセルロース分解酵素について研究を実施してきており、褐色腐朽菌G. trabeumからキシランの分解に関わるヘミセルラーゼを複数クローニングし、異種宿主発現するとともに、その機能解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、褐色腐朽菌から見出された新規のセルロース結合ドメインについて、その吸着メカニズムに関する知見や木材組織中での局在性に関する知見を得た。また、ヘミセルロース分解酵素についても、複数の酵素遺伝子を組換え酵素として生産することに成功し、その一部については機能解析が完了した。リグニン分解についても、腐朽材のリグニンの調整に成功した。以上のことから概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
褐色腐朽菌から見出された新規のセルロース結合ドメインについては、さらに詳細な研究を進め、そのセルロース結晶の認識部位の特定など、その吸着メカニズムの理解をさらに深めるとともに、酵素分解における意義について調査する。ヘミセルロース分解酵素については、単離した基質のみならず、植物細胞壁中のヘミセルロース分解への関与についても調査する。さらにリグニン分解についても、腐朽材からのリグニンの単離が完了したため、その解析も進める予定である。
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