2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high-speed production technology for circulating all-biomass polymers to change environmental impact positively.
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22H02404
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 憲司 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (00216714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 直樹 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (20464050)
廣瀬 大祐 金沢大学, 物質化学系, 助教 (60806686)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イオン液体 / バイオマス / 連続変換プロセス / 二軸混練 / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は主に、前年度までに予備的に見出した飽和アルデヒドを用いた酸素利用によるバイオマスの酸化的エステル化修飾法の開発に取り組んだ。セルロースとアーモンド由来のベンズアルデヒドをモデル基質とした場合、条件を最適化することで純粋な酸素雰囲気下ではなく、空気中に20%含まれる酸素を利用する条件においても2に近い高い置換度で目的のセルロースエステルが得られることを見出した。クミンやアニス由来のクミンアルデヒド、アニスアルデヒドだけでなく、リグニンのバイオリファイナリーで得られるバニリンやシリンガアルデヒド誘導体を用いた場合にも目的の酸素酸化的エステル化反応が進行し、対応するセルロースエステルがそれぞれ得られた。また、試薬ではなく天然精油のままでのバイオマス変換利用にも挑戦し、アーモンド精油をそのまま用いた場合にも、純粋な精製済みベンズアルデヒドと同等のセルロースエステルが得られたことから、夾雑で様々な副反応が起きると想定された天然精油を用いた場合にも非常に選択的にセルロース上での酸化的エステル化反応が進行することが確認された。さらに、研究の過程で想定外にセルロースとヒドロシラン間で脱水素型のシリル化反応が進行することを見出した。この反応形式には従来追加の触媒が必要とされてきたが、本研究構想のメインコンセプトであるイオン液体を溶媒かつ触媒として用いるアプローチにより、追加の触媒を一切加えずセルロースとヒドロシランをイオン液体に溶かすだけのシンプルな反応系で目的のシリルエーテルが得られた。多糖のシリル化は水酸基の保護や超薄膜形成用前駆体として古くから利用されてきたが、従来用いられてきた吸湿による分解と高い毒性および反応後の廃棄物が問題となっていたハロゲン化シランやジシラザンを利用することなく、廃棄物をクリーンかつ理論上最小の水素に置き換えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、次の2つの内容に大別される「A:樹脂・反応リデザイン」「B:プロセスリデザイン」。現在のところ、申請時の当初計画の内容に従い順調に研究が進んでいることに加えて、当初計画では想定していなかった環境調和型の新規バイオマス修飾反応を開発できたことから、標記の評価に該当すると判断した(Green Chem. 2023, 25, 7062)。 以下に詳細を記す。Aについては、従来のイオン液体と比べてバイオマス溶解性と触媒活性が総合的に高い新規イオン液体1-エチル-3-メチルイミダゾリウムピリジノレート(EmimOPy)が、空気中の酸素を用いた酸化的エステル化反応の最適触媒系として機能することを見出し、反応リデザインの面で非常に有用な成果が得られた(論文投稿準備中)。さらに、上述のように従来試薬の毒性や廃棄物が問題となっていた多糖のシリル化を、環境調和型の脱水素シリル化の形式で行えることを初めて示した。また、樹脂についても、リグノセルロース系バイオマスの一つであるサトウキビ由来のバガスから、一工程で熱可塑性のバガス混合エステルを得ることに成功し、天然廃棄物から直接的に合成したバイオマスプラスチックとして高い性能を有することを明らかにした。 Bについては、イオン液体と二軸混練機を用いたバイオマスエステルの連続的フロー合成について取り組み、始めに小型の二軸混練機を用いた合成に成功し、さらに大型の混練機へとスケールアップすることで、1台あたり1日換算で10 kg以上の速度でバイオマス樹脂が連続的に生産できることを明らかにした 。また、樹脂の性質を容易に調整することができる混合エステル化についても同様の手法で対応可能であることを報告した。反応後の溶液からのイオン液体の回収法の開発についても取り組み、適切なプロトン性溶媒の添加がイオン液体と副生成物の分離に効果的であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Aについては、従来のエステル化法および酸化的エステル化法について、リグノセルロース系バイオマスへの展開範囲を広げることで、同手法が広いバイオマス適用範囲を有することを明らかにする。この内、酸化的エステル化法については、用いることができる天然アルデヒド含有精油の種類を拡大させることを目的に精油適用性検討を行う。また、前年度に想定外に見出したセルロースとヒドロシラン間の脱水素型シリル化反応については未解明な点が多くあり、例えば二酸化炭素雰囲気下で反応性が向上する様子が観測されているため、反応機構に関するデータ収集およびその解明に関する研究についても検討を進める。このような反応開発の結果として得られたバイオマス由来樹脂の物性についても並行して評価を行い、反応と物性の両面から適切な変換システムを見出す。 課題Bでは、二軸混練機を用いたこれまでのセルロースエステル合成の知見を基に、実バイオマスへの適用検討を進める。既に精製されているセルロース単体の場合と異なり、強固な植物細胞壁の全成分を反応させるには適切な投入速度、加熱温度、滞留時間などのパラメータ設定が不可欠であると想定される。これまでのセルロースでの検討で、二軸混練機による超高濃度連続反応の実現とそれによる超短時間化・超効率化が起きることが確認されているため、その知見を基に実バイオマスでのフロー変換を可能にする条件の最適化を行う。さらに、Aで開発した新規反応群についてもバッチ系から二軸混練フロー反応系への移行をセルロースモデルから順次検討する。
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[Presentation] "Investigation of mechanical properties and marine biodegradability of thermally processable cellulose esters and their composites with bacterial cellulose nanofibers"2023
Author(s)
Ao Oshikiri, Ayane Yamaguchi, Ayaka Kameda, Yuichi Ebata, Hiroyuki Itaya, Tetsuo Fujie, Tokuo Matsushima, Takatomo Kusano, Yutaka Takeuchi, Naoki Wada, Kenji Takahashi
Organizer
The 13th SPDJ Internaational Polymer Conference (IPC2023)
Int'l Joint Research
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