2022 Fiscal Year Annual Research Report
高水温耐性のある雌雄異株ノリのアポガミー誘発と性分化機構に関する研究
Project/Area Number |
22H02418
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
二羽 恭介 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70463429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高崎 寛則 埼玉大学, 理工学研究科, その他 (50612157)
小檜山 篤志 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (60337988)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ノリ / 南方系野生ノリ / アポガミー / 雌雄分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、南日本や暖流海域に自生する雌雄異株ノリの種多様性や生理的特性を把握しながら温暖化に対応したノリの育種素材の収集を行い、雌雄異株ノリから効率的に品種改良が取り組めるように、受精無しでノリの純系株に分離できるアポガミーの誘発条件とその藻体特性を把握する。さらに、雌雄同株の養殖対象種スサビノリでは研究できなかったノリの雌雄分化の制御機構に関する研究に取り組むことを目的としている。令和4年度は、伊豆諸島で採集した雌雄異株ノリを用いて、詳細な形態観察とDNA解析を行った結果、伊豆諸島にはハイタンアマノリに加えてオニアマノリも自生していることを明らかにした。また、伊豆諸島で自生するこれら2種はいずれも、本州および中国に生育するものとは遺伝的に分化していた。一方、暖流黒潮の影響を受ける房総半島の沿岸に生育してた細葉で大型の野生ノリを分子同定した結果、2021年に新種記載されたセンジュアマノリであることが分かり、本種から分離した系統保存株を用いて室内培養実験および野外養殖試験を行った結果、葉状体の稔性は高かったが、高生長かつ高水温耐性の特性を持つことが明らかになった。本種はまれに葉状体の上部と下部で性の異なる個体も存在したが、雌雄異株のノリであり、雌雄の出現頻度は1:1であった。これらのことから、本種は核遺伝子支配によって雌雄分化が制御されていることが示唆された。センジュアマノリの葉状体から薬品等を用いてアポガミー誘発を行ったところ、受精無しで一定数の糸状体株を分離することができた。また、本種の雄性葉状体および雌性葉状体からmRNAを抽出し、次世代シーケンサーでmRNAの塩基配列を網羅的に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南方系雌雄異株ノリの収集を行うことができ、そのうちの一種については野外養殖試験でも高生長かつ高水温耐性の特性が見られ、新たなノリ養殖対象種として有望なノリを見出すことができた。このため、これらの研究成果を論文公表することができた。また、雌雄異株ノリの葉状体から一定数のアポガミー由来の糸状体を分離することが可能になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も日本南部および暖流海域に自生する野生ノリを採集し、形態観察およびDNA解析によって種同定を行いながら特性把握を行う。また、引き続きアポガミーの誘発条件について検討し、アポガミー由来の糸状体から生じる葉状体の特性を把握するとともに、雌雄異株ノリの雌雄分化に関与する遺伝子の探索も行う。
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