2022 Fiscal Year Annual Research Report
Viral infection and its control mechanisms of marine plankton communities as revealed by dissolved ribosomal RNA
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22H02420
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80795055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 博之 京都大学, 化学研究所, 教授 (70291432)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 海洋生態 / プランクトン / ウイルス / リボソームRNA / メタトランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、遺伝情報を用いた海洋調査の台頭によって多種多様なウイルスの存在が浮き彫りとなった。しかし、植物プランクトンを基底とする海洋生態系において、多様なウイルスが物質循環の規模と性質に及ぼす影響については未だ明らかになっていない。本研究は、海水中に溶存する宿主のリボソームRNAを新たな尺度として、真核性プランクトン群集に対するウイルス溶解感染を網羅的かつ定量的に解明することを目的とする。 本年度は、海水溶存態RNAの物理化学的安定性、およびその抽出方法の検討を行い、本研究の核となる基盤技術を構築した。その結果、精製したリボソームから溶存態rRNAを80%以上の収率で回収可能な新規手法の確立に成功した。また、共同研究者より提供を受けた海産微細藻類とウイルスの単離株を使用し、ウイルス感染過程における細胞内・溶存態rRNAの挙動を調査した。それに伴い、デジタルPCRを用いた細胞内外rRNAの定量化手法を確立した。現在、ウイルスと宿主の指標遺伝子を標的としたマルチプレックス・デジタルPCRアッセイの技術開発を進めている。さらに、2022年10月に学術調査船「新青丸」の四国・東海沖南部海域・東シナ海南部海域の航海に参加し、粒子・溶存画分のRNA分析試料を採取した。採水は表層および中深層から行い、さらに船上培養実験を行うことでRNAの濃度・種組成変化を評価した。今後、同試料の分析を進め、その成果を国内外の学術会議、および原著論文として発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、同研究課題の核となる溶存態RNAの抽出とその定量に関する手法の確立に成功し、海水溶存画分の遺伝子調査が可能となった。室内における藻類-ウイルス感染実験でも意図した現象が観察された。 一方で、現場観測における船上培養実験では、培養環境の変化に起因すると見られる過剰な細胞溶解が観察される問題が明らかとなり、さらなる実験系の改良が必要である。 以上の状況を踏まえ、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
室内培養実験で観察された感染に伴う細胞内容物の放出について、宿主・ウイルスの遺伝子発現の側面から感染機構を調査する。現場群集を用いた培養実験の問題に関しては、実験条件の最適化、及び培養期間中の溶存RNA分解速度評価によって解決を試みる。具体的には、培養スケールの拡大、光や水温環境の検討について、文献調査と予備実験を並行して進める予定である。
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