2022 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の卵形成過程における代謝メカニズムの解明と卵質の人為的操作
Project/Area Number |
22H02426
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
古川 史也 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (80750281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神保 充 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (10291650)
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 卵濾胞 / タンパク質 / 代謝 / 成熟 / 生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類においては、卵の成長・成熟過程に起こる様々な栄養素の輸送および代謝に関する知見が乏しい。そこで本研究では、主な実験魚をゼブラフィッシュとして、卵形成過程に起こる代謝メカニズムを詳細に検討する。また、ヤマメ及びマサバにおいても、代謝物の測定などを行い、それぞれの結果を比較する。最終的には、得られた成果をもとに、人為的に卵質をコントロールする技術の確立を目指す。 2022年度は、ゼブラフィッシュおよびヤマメにおける基礎的データの収集を主に行った。すなわち、卵濾胞の成長過程の各ステージにおける代謝物の測定、およびプロテオーム解析によるステージに特徴的なタンパク質の検出である。ゼブラフィッシュとヤマメの両方において、卵内の様々な代謝物が成長・成熟につれて増加する傾向にあったが、いくつかの代謝物はそれとは異なるユニークな挙動を示した。また、安定同位体炭素13を用いて合成された代謝物をトレーサーとして、ゼブラフィッシュの卵濾胞を培養したところ、ステージに特有な代謝活性の変化も検出された。これらの結果は、卵濾胞は様々な栄養素を一定速度で取り込んでいるわけではなく、成長・成熟ステージに応じた特異的な栄養素の取り込みや代謝を行っていることを示唆している。 プロテオームの結果、上記の現象を支持するような酵素タンパク質の増減が確認できた。また、本来は研究対象として考慮していなかった興味深いタンパク質が、いくつかの卵成長ステージにおいて特徴的な発現パターンを示していることも発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していたほとんどの実験を滞りなく完了することができた。また、プロテオーム解析の結果から、興味深いタンパク質を今後の研究対象とすることができた。一方で、飼育環境の準備状況の問題から、マサバのサンプリングを実施することができなかったため、こちらは次年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に明らかになったゼブラフィッシュおよびヤマメ卵濾胞における代謝の変化について、これがどのようなトリガーによって引き起こされているのかを検討する。具体的には、各種ホルモンの刺激が卵濾胞内における遺伝子またはタンパク質の発現、酵素活性等に寄与している可能性を培養実験によって調べる。ゼブラフィッシュの卵濾胞をステージごとに分離して培養液に入れ、卵の成長や成熟に関与するホルモン、または代謝の制御に関与することが想定されるホルモンを添加して培養する。 また、プロテオームによって見つかったタンパク質(酵素)が、卵濾胞においてどの細胞に発現しているのか、またその具体的な機能は何なのかを調べる。このタンパク質をコードする遺伝子をクローニングし、in situ hybridizationによる発現部位の解析や、当該酵素が代謝する物質および生成される物質を、LC-MSによって分析する予定である。
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