2022 Fiscal Year Annual Research Report
石油産生緑藻Botryococcus brauniiの脂質分泌機構の解明
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22H02432
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 茂 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00224014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 耕史 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00595613)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Botryococcus braunii / 微細藻類 / 炭化水素 / 分泌 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
群体性微細緑藻Botryococcus brauniiは脂肪酸系の脂質ではなく、乾燥藻体重量の数十%にも及ぶ大量の液状炭化水素やその関連化合物を生産し、細胞外に分泌するという、他藻類には見られない極めてユニークな性質を有しているため、バイオ燃料源としての利用が期待されている。細胞内で生産された炭化水素等は、細胞膜および細胞壁を透過して、個々の細胞間をつなぎ止めている細胞外マトリクスに蓄積されるが、その分泌機構は未だ不明である。そこで本研究では、本藻種における炭化水素および脂溶性化合物の細胞外分泌機構を、分子レベルで明らかにする事を目的とする。今年度はトリテルペン系炭化水素を生産・分泌するB品種につき、他生物由来のステロールトランスポーターと相同性を示すABCトランスポーターのcDNAクローニングを行った。トランスクリプトームデータベース上に見出された3種のステロールトランスポーター様遺伝子の内、1435および1336アミノ残基からなるタンパク質をコードする2種遺伝子のcDNAクローニングを終了した。現在、残り1種のcDNAクローニングを試みている。今後は大腸菌を用いた異種発現系により、これらの遺伝子の機能同定を試みる予定である。一方、本藻種における脂質分泌が、ABCトランスポーターを介していない可能性に備え、脂質分泌系に異常をきたしている変異藻株を取得するため、トリテルペン系炭化水素を生産するShowa株に対しEMS処理を行った。脂質分泌能が亢進、あるいは阻害されている細胞を、液体培地中での不沈の有無により選別して継代培養株を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料として用いる藻体の培養を行っている培養庫の温度調節器に不具合が生じたため、その修理期間を含めて藻体の培養が効率良く行えない時期があった。そのため藻体から油滴を調製するための大量培養や、ABCトランスポーター阻害剤の添加による遺伝子発現実験を十分に行うことができなかったものの、ステロールトランスポーター様遺伝子のcDNAクローニングは順調に進んでいることから、研究計画はおおむね予定通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までにcDNAクローニングが終了したステロールトランスポーター様遺伝子につき、その機能同定を、まずは大腸菌を用いたin vivoのアッセイ系を用いて引き続き行う。スクアレン蓄積大腸菌株は入手済みであるが、本藻種におけるトリテルペン系炭化水素の分泌を再現するため、botryococcene蓄積大腸菌株も作製予定である。また、大腸菌で十分な結果が得られなかった場合は、酵母あるいは緑藻Chlamydomonasを用いて同様のアッセイを行う。また、当該ステロールトランスポーター様遺伝子につき、培地中の阻害剤の有無や、藻体の増殖段階の違いによる発現状況の変化を解析し、細胞外マトリクスへの炭化水素蓄積量との関連を明らかにする。一方、炭化水素分泌系の変異株の取得については、Showa株および増殖が速いOIT678株に対して重イオンビーム照射を行う予定である。
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Research Products
(3 results)