2024 Fiscal Year Research-status Report
「あふれさせる治水」に向けた流域農地の管理と被災作物の経済評価
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23K23709
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
栗原 伸一 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (80292671)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 史朗 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20388119)
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20447345)
木下 剛 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (30282453)
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (40618485)
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (90292672)
加藤 弘祐 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (70825322)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2026-03-31
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| Keywords | 流域治水 / 被災作物 / オークション実験 |
| Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,受益者側(下流域住民)に対するオークション実験で計測した「あふれさせる治水」で浸水した米の経済価値の評価結果を分析した。 江戸川下流域の住民47名を対象に,浸水した米に対する支払意志額を,実験経済学的なアプローチのひとつであるrandom nth-price auctionを用いて測定したところ,多くの住民が,浸水米を「平均1,578円/5kgで購入しても良い」と考えており,廃棄せずに販売できる可能性が十分あることが明らかとなった。ただし,「洪水から守ってくれた米」としての付加価値(平均384円)を評価している者は4分の1しか居らず,3分の2は平均651円の値引きを期待していた。このことから,浸水米の販売戦略として,一般に値引き販売し,その差額分を国や自体が補填するか,普段購入している米と同額以上を支払う消費者だけを対象に販売することが考えられた。ただし,後者の場合は市場が小さくなるため,慎重なマーケティングが必要になろう。そこで,支払意志額を被説明変数として回帰モデルを推定したところ,経済的に余裕があることや,持ち家であること,水害に備えていることが評価を高める要因であることがわかった。また,住民の合意形成に資するため,実験と一緒に調査した「流域治水に対する賛成度」を目的変数とした順序プロビットモデルを推定した。その結果,歴史的に洪水被害が多い葛飾区に住んでいることや,男性で年収が高いこと,親類・知人に農家がいることが賛成要因となっていることがわかった。一方,浸水想定区域に住んでいることや水害に備えていることは否定要因となっていた。 以上のように,当該年度は,最終年度に予定しているワークショップでの議論の題材となり得る知見を多く獲得することができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で予定していた3つのタスク(流域治水に向けての農地の経済評価、浸水作物の経済評価、ステークホルダーを集めたワークショップ)のうち、ワークショップを残して2つのタスク遂行を完了しており、概ね順調に進展していると自己評価した。ただし,海外の事例調査が英仏米の3ヶ国だけであることから,当初の計画以上に進展しているまでの評価はできなかった。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、流域の住民、農家、自治体を交えたワークショップを開催する予定である。 しかしながら,現在のところ,受益者側である下流域住民の意識(水田の治水機能と浸水作物についての経済価値)しか捉えられていない。 よって,ワークショップの前に,まずは,治水へ協力する農家側の意識(「あふれさせる治水」への意識や下流域住民の考えに対する反応など)を捉え,それらを比較することで,治水の協力者と受益者との意識構造の違いを捉え,流域関係者の合意形成に資する知見を得る予定である。また,現在の「あふれさせる治水」へ協力して被災した際の補償内容の認知度や意識を明らかにすることで,新たな補償制度の設計に向けた根拠を獲得するつもりである。
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| Causes of Carryover |
2024年度に実施を予定していた農家を対象としたオークション実験と海外調査が実施できなかったため,次年度使用額が生じてしまった。 実施できなかった理由は,前者(オークション実験)については,2022年度に実施した受益者(下流域住民)とは異なり,被験者の抽出と実験の設計が極めて難しく時間がかかってしまったためである。とくに,農家を抽出することは発注予定先の民間調査会社でも行ったことがないため,事前に予備アンケートを何度も実施して確定する必要があった。また,オークションのシステム自体も,受益者を対象として実施したとき,同時入力が多いと不安定になるため,改良を施す必要があった。ようやく,どちらも解決の見通しが立ったため,2025年度は農家を対象としたオークション実験を実施する計画である。 後者(海外調査)については,訪問予定先であった米国とベトナム,ドイツのホストの都合と我々の都合が合わなかったためである。2025年度は,いずれも早めに日程を調整し,訪問する計画である。
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