2022 Fiscal Year Annual Research Report
Regional carbon dynamics in the agroecosystems utilizing traditional semi-natural grassland
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22H02472
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
当真 要 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10514359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉持 寛太 北海道大学, 農学研究院, 講師 (00225252)
上野 秀人 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90301324)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 土壌炭素固定 / 野焼き / 炭化物 / Miscanthus / 窒素循環 / 流域の炭素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
・ススキ栽培圃場における土壌炭素動態の解析を実施した。栽培開始から7年目(本研究1年目)までの土壌炭素含量は植物地上部を還元すると土壌炭素の減少が緩和されていたが、燃焼残渣の還元は土壌炭素の増減に影響していなかった。一方で、栽培開始からの7年間の土壌炭素量は燃焼残渣を多く還元した場合に減少が小さくなる傾向が見られた。燃焼残渣に含まれる炭等の影響により土壌炭素の分解が緩和された可能性があり、今後腐植の形態を解析し詳細なメカニズムを解明していく。土壌や植物を含めた生態系全体の炭素収支は植物を燃やさずに還元している場合に最も高くなり、植物中の炭素の還元が大きく寄与していた。 ・阿蘇南部の野草地における土壌調査を6地点で実施すると共に、過去に採取した土壌試料も合わせて土壌炭素蓄積速度の解析を実施した。その結果、先行研究の土壌炭素貯留速度(32 kgC/ha/yr)と同程度の値(29.7 kgC/ha/yr)が得られ、地形あるいは地点の違いは長期の土壌炭素貯留速度へ大きな影響は無い可能性が示された。一方で、野草の刈取を実施している圃場と野草を刈り取らず野焼きだけを実施している隣接した2圃場での表層の土壌炭素を比較した結果、刈取地点は野焼き地点より土壌炭素含量が低く土色が明るかった。さらに、土壌炭素貯留速度が刈取地点で262 kgC/ha/hr(750年間)であったのに対して野焼き地点では452 kgC/ha/yr(515年間)であり、対象期間の違いを考慮しても野草地の管理方法の違いにより表層の土壌炭素貯留速度に大きな違いが生じることが示唆された。野焼きを実施している野草地と隣接する杉植林地の表層土壌を比較した先行研究でも野焼きを実施している野草地が高い炭素貯留速度を示したことが報告されており、今後は反復数を増やしてデータの精緻化を図ると共に詳細なメカニズムの解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・草地管理の違いによる土壌炭素・窒素循環と植物への影響:7月に7年目の土壌採取し土壌炭素・窒素量および土壌特性の分析・解析を実施した。また、5月、6月、7月の3回に分けて15Nラベルの塩安を散布し、植物体の15Nラベルを実施した。1月には植物体の生育調査と刈り取りを行うと共に、野焼きを再現した処理区の植物体の燃焼と燃焼残渣の圃場への還元を行った。なおその際、15Nラベル植物を未ラベル圃場に還元する等予定していた窒素動態解析に必要な作業を確実に行うことができた。 ・野草地で固定された炭素の農地での炭素固定量の算定:阿蘇国立公園管理事務所の協力のもと野草堆肥を長期連用している農家にコンタクトを取り、5圃場を調査対象に選定した。そのうち2圃場から土壌を採取し炭素含量の測定と解析を実施した。 ・阿蘇地域の河川からの炭素流出の測定と地域の炭素収支モデルの構築:阿蘇地域の標高データ、土地利用データ、土壌データをArcGIS状で整理し集水域ポリゴンを作成した。また国土交通省河水文水質データベースから白川の立野観測所の水位および流量データを整理すると共に、阿蘇カルデラ内および阿蘇地域から流出する主要河川の採取を4月と9月に実施し水質分析と解析を行った。 以上より、計画していた調査を予定通り実施できたと共に解析を進めており、研究は順調に進展している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
・ススキ栽培圃場では、採取した土壌のδ13C解析から土壌炭素へのススキの寄与を算出すると共に15Nでラベルした植物の分解と15N窒素の動態を解析し、分解による窒素動態の解析を進める。加えて1月には例年通り植物の生育と刈取調査を実施すると共に、野焼きを再現した処理区の植物体の燃焼と燃焼残渣の圃場への還元を行う。 ・阿蘇では、野草地の管理状況(野焼や刈取りの有無および野草地から植林地への変換)による土壌炭素蓄積速度や腐植物質の特徴解析のための試料採取について、4月に1回目の調査地選定と試料採取に必要な申請を準備する。それに基づき8月に調査地での土壌調査を実施すると共に2回目の調査地選定を実施し試料採取に必要な申請を準備する。2回目の申請に基づき、秋または2024年春に土壌調査を実施する。それらの分析結果に基づき、阿蘇地域全体での最初の土壌炭素貯留量の試算を行う。加えて、河川からの水流出モデルの検証と精緻化のために集めたデータを用いてSWATでのシミュレーションを実施する。
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