2023 Fiscal Year Annual Research Report
植物ー植物内生微生物複合系を用いたネオニコチノイド系農薬の後作物残留制御
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22H02476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
片岡 良太 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00635104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 虹児 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (70828863)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニテンピラム / 植物内生細菌 / Bacillus属菌 / 植物浸透移行性農薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラムを分解できる植物内生細菌株を分離して特定した。分解細菌を探索するために、さまざまなネオニコチノイド系殺虫剤を曝露したコマツナから約300株の内生細菌株を分離した。それらを分解試験に供し、植物内生細菌株NIT-2が、ポテトデキストロースブロス(PDB)培地中で14日間インキュベートした後、ニテンピラムを約65%分解することを明らかにした。この菌株は、16S rRNA シーケンスにより最も相同性が近い細菌種は Bacillus thuringiensisであった。その後の経時的な分解試験では、PDB 培地で 28 日間インキュベートしたところ、ニテンピラムが98.18%分解された。また、細菌の増殖 (OD600nm) に連動して分解速度も速まった。一方、無機塩(MS)培地での分解試験でも、NIT-2株が分解プロセス中に唯一のCまたはN源としてニテンピラムを使用することが確認された。加えて、CPMA、CPMF、CPFがニテンピラムの分解過程で代謝物として同定された。さらに、代謝産物の分解を検討したところ、CPMFを71% 、CPFを18%分解することが確認された。NIT-2 株はニテンピラムとその代謝産物の両方を分解できるため、Bacillus thuringiensis NIT-2 株はニテンピラムで汚染された環境のバイオレメディエーションへの活用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設定した3課題について、課題①では、ジノテフランやイミダクロプリド、ニテンピラムを分解する植物内生細菌を発見した。課題②では、ネオニコチノイド系農薬が植物内生微生物相に影響していることを次世代シークエンス解析や培養法を通して明らかにした。しかし、植物代謝に与える影響については今後実施する予定である。課題③では、どのような微生物環境と非生物的条件がそろうと、植物-微生物共生系のネオニコチノイド系農薬制御が最大になるのか?という課題に対してポット試験を通して検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度、内生細菌や植物浸透性農薬が植物代謝に与える影響を調査し、『植物内生微生物を用いたネオニコチノイド系農薬の作物残留制御は可能か?』という学術的問いに対する何等かの解答を得たいと考えている。そして、ネオニコチノイド系農薬の作物残留制御を可能にし、農薬の後作物残留リスクを低減するための新しい技術と知見を提案したい。
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