2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high lipid producing algal strains using a novel epigenomic editing method..
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22H02481
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 博寿 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60396306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 石根 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10290909)
新家 弘也 関東学院大学, 理工学部, 専任講師 (30596169)
町田 峻太郎 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (40827490)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 円石藻 / バイオ燃料 / 海洋微細藻類 / CCUS / エピジェネティクス / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、藻類を用いたバイオ燃料生産への関心が高まる中、遺伝子組換えによる代謝改変株の作出が盛んに行われている。しかしながら、既存の遺伝子操作技術で作出された変異体は、実験施設外へ持ち出すことができないため、現行の法規制の下では、屋外で培養を行い、大量に燃料を生産することは不可能である。そこで、本研究では我々が新たに開発した遺伝子発現抑制技術(以LOGS法)を用いて、海洋微細藻類(ハプト藻)の脂質合成能を強化し、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とした。 LOGS法は、特定の遺伝子の発現を長期間制御する方法であるが、開発されて間もない技術であるため、さらに改善・改良を加える必要がある。そこで、本年度は当該技術のオフターゲット(標的とする遺伝子以外にも影響を与えてしまうこと)について解析を行った。以前我々はハプト藻Pleurochrysis carterae種の光合成に関与する遺伝子(以下FCP)について、LOGS法を用いた発現制御に成功している。そこで、野生株を対象実験として、4株のFCP発現抑制株についてNGSによる網羅的な発現解析を行った。その結果、今回調べられた限りでは、標的遺伝子以外に極端に発現が変化した遺伝子は検出されなかった。次に、貯蔵脂質量の増加を目的として、脂質分解酵素をコードする遺伝子について、LOGS法を用いた発現抑制を行った。形質の異なるいくつかの変異株について脂質量を調べた結果、一部の株において顕著な貯蔵脂質の増加が確認された。また、廃液の藻体培養への応用利用に関する研究として、メタン発酵により生じる廃液(メタン発酵消化液)について解析を行った。その結果、ハプト藻Tisochrysis lutea種を用いた実験において、同消化液が一定の濃度条件において著しい細胞の増加とそれに伴うクロロフィル量の増加を促進することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は我々が新たに開発した遺伝子発現抑制技術(以下LOGS法)を用いて、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とする。本年度はLOGS法のオフターゲットと標的遺伝子の汎用性について、また、廃液の細胞培養への有効活用について研究を行った。以下に記述する理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。 特定の遺伝子を操作する技術を確立する上では、i) オフターゲットの有無の精査と、ii) 標的とする遺伝子の汎用性は非常に重要である。そのため、本研究の一つの課題として新規遺伝子発現制御法の正確性の向上があげられる。この観点において、本年度のFCP発現抑制株を用いたNGS解析から得られた結果は、LOGS法におけるオフターゲットの発生率が著しく低いことを強く示唆するものであり、新たな遺伝子制御技術の確立に向けて大きく前進したといえる。また、当該技術は、現時点ではP. carterae種においてのみ確立されているため、別種への応用についてもT. lutea種を用いて現在研究を進めている。さらに、同技術はこれまで外来遺伝子GFPと光合成に関与する遺伝子(FCP)の2遺伝子についてのみその効果が確認されてたが、今年度は新たに脂質代謝に関与する遺伝子(Lip)について、脂質量の増加が示された。これは、当該技術の汎用性を示唆するものであり、技術開発の観点から評価できると考えられる。 一方、バイオ燃料の社会実装を考えた場合、微細藻類の大量培養については、培養液の調整に関わるコストの高さが実用化を阻む原因の一つとなっており、特に栄養塩の安定供給に関しては課題が多い。その観点から、本研究で得られたメタン発酵消化液の利用が細胞培養に与える一定の効果は、問題解決の一助となりうる。 以上より、本研究の進捗状況の評価を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、新規な遺伝子発現抑制技術(以LOGS法)を用いて、ハプト藻の脂質合成能を強化し、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とする。LOGS法は、特定の遺伝子の発現を長期間制御する方法であるが、開発されて間もない技術であるため、同手法を用いて有用株を作出すると同時に、さらに改善・改良を加える余地が残されている。そこで、昨年度は1)LOGS法の作用機序の解明および2) LOGS法を用いた脂質合成能強化株の作出の一部、および3)メタン発酵消化液の細胞培養への利用、を行った。そこで、本年度以降は以下に示す項目について研究を遂行する。 1) LOGS法の作用機序の解明と代謝強化株の作出 今年度は、これまでPlerucorhysis carterae種を用いて行った遺伝子特異的なメチル化の解析に加え、MeDIP-Seq解析やRRBS解析等により、より広範囲にメチル化の状態を調べることにより、オフターゲットについてのデータをさらに蓄積していく。また、今年度は新たにCS(Citrate Synthase, クエン酸合成酵素)もしくはPDK(Pyruvate Dehydrogenase Kinase、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ)の発現抑制株の作出を行う。さらに、これまで取得しているFCPの発現抑制株を基に、複数の遺伝子の発現を抑制したマルチ抑制株を創出し、さらなる代謝能の強化を試みる。 2) 大量培養実験と栄養要求性実験 本年度はレースウェイ型の大型培養装置を用いて100 Lスケールでの大量培養実験を行い、培養期間内における培養液組成(窒素、リン、カルシウムなどの栄養塩や溶存二酸化炭素の値など)の変化を測定する。また、メタン発酵消化液の応用利用を視野に1 Lスケールでの培養実験も同時に行う。
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Research Products
(4 results)