2023 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌中のメタン生成における電導性鉄酸化物と直接電子輸送の役割の解明
Project/Area Number |
22H02485
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
常田 岳志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (20585856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 順子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (10354052)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水田 / メタン / 直接電子伝達 / 土壌 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
水田はコメを生産する人類最大の食糧基地である一方、土壌中の微生物の働きにより強力な温室効果ガスである「メタン」が多量に生成されている。ただし土壌タイプ等によってメタン排出量は大きく異なり、そのメカニズムは十分解明されていない。比較的最近、鉄還元菌の代謝で生成された電子が、電導性の鉄酸化物を経由して直接メタン生成菌に受け渡されるDIET(Direct Interspecies Electron Transfer)と呼ばれる現象の存在が明らかにされ、その現象がメタン排出量の多寡に関与する可能性が示唆されている。 本年度はDIETの定量実験系の構築に向けて、2022年の解析で用いたものと同じ水田の土壌を嫌気培養し、培養時間とガス発生量および鉄還元量の関係を明らかにした。DIETの指標となり得る微生物機能遺伝子を見出すため、本培養試験の培養前後の土壌よりRNAを抽出し、網羅的シークエンスデータを取得した。 安定同位体を用いたDIET直接定量法については、メタンの安定同位体比分析に必要な-130℃~-150℃に調整可能なコールドトラップの構築を進めた。今後、このクライオフォーカス部を完成させ、別途入手したメタンの熱分解炉を含む前処理装置と組み合わせることで、メタンの炭素および水素安定同位体比がともに分析できるようになる見込みである。 一方、水田からのメタン排出量の変動に関する研究に関して、メタンの排出経路や温度依存性との関連を調査し、メタン排出量には大きな日変動および季節変動があること、その主な原因はバブリング経路の排出の増減によって生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響等で、同位体比測定に必要な熱分解炉を備えた前処理装置の入手が予定より遅れたこと、並びに、メタンの同位体比測定に必須となる特殊なクライオフォーカス部分を自作する必要が生じたため、DIET直接定量手法の部分にやや遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
微生物面の解析ではメタン多排出土壌から微生物のメタトランスクリプトームデータを得ており、今後、メタン多排出の指標となる機能遺伝子候補を見出し、DIETとの関係を調査する。DIETの定量手法構築にあたっては、メタンの安定同位体比分析に必要なコールドトラップ等を自作する必要が生じたため、その構築を加速する。
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