2022 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電顕を用いた時分割構造解析による破傷風毒素の膜侵入機構解明
Project/Area Number |
22H02557
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 豪 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (20263204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安居 輝人 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 感染症制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (60283074)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クライオ電顕 / 破傷風毒素 / 時分割解析 / 低温トラップ / 構造変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
破傷風毒素(TeNT)は、同じClostridium属のボツリヌス毒素(BoNT)と細胞膜透過の分子機構が同一であるにも関わらず、BoNTが末梢神経系で作用するのに対してTeNTは中枢神経系のみで働くことが知られている。本申請では、還元型(不活性型)の破傷風毒素(TeNT)をクライオ電顕で用いるグリッドに固定化し、低pH下で酸化剤を添加して酸化型(活性型)へと構造変化させた場合の変化の過程を低温トラップ法で解析し、中枢神経系のみで膜侵入が起こる分子機構について考察することを目的としている。本目的を達成するためには、令和3年度に導入したクライオ電顕を稼働させる必要があり、令和4年度はそのほぼ全てのエフォートを装置の立ち上げに注力した。測定装置の制御装置の部品交換をしたり、1つ1つ原因を検討してはそれを確認したりする作業を繰り返しながら測定装置の立ち上げを行った結果、令和4年度の年度末に入ってから漸く装置が稼働しはじめ、不安定ながらもTEM画像の連続撮影が可能となる場面が徐々に増えてきた。 一方で他の測定装置を用いてグラフェンを酸化し、エポキシ基を導入したクライオ電顕用の新規グリッド(EG-Grid)を開発し、グラフェン膜上にタンパク質を固定化して効率よく構造解析が可能となることを実証し、欧文雑誌に投稿し受理された(Fujita, J. et al., Scientific Reports, 2023)。 実際のEG-Grid上に破傷風毒素(TeNT)を固定化し、それに反応溶液を混合してから凍結するまでの時間を調節して構造変化を追う作業は令和5年度に持ち越すこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該グループでは、グラフェンに気相反応で酸素官能基を導入できる革新的酸化反応の発見を基にしてクライオ電顕用のグラフェングリッドにヒドロキシ基の導入とそれに続くエポキシ基の導入によってEG-Grid(Epoidized Graphene grid)の開発に成功している。これを用いればグラフェン膜上に様々なタンパク質を固定化し、クライオ電顕でデータ収集を行う際のサンプル調製に掛かる時間を大幅短縮できることを実証し、高効率に構造解析が可能となることを欧文雑誌に発表した(Fujita, J. et al., Scientific Reports, 2023)。一方で、革新的酸化剤を用いて導入したヒドロキシ基に対して様々な化学修飾も可能であり、脂質膜を形成させて、エポキシキのみを導入した場合と明らかに異なる粒子の形を反映したTEM画像が得られることも実証し、第143回日本薬学会にて発表した(学生優秀発表賞(口頭発表の部))。 残念ながら本申請の目標となっている破傷風毒素(TeNT)を固定化し、溶液の条件を変化させたときの構造変化を低温トラップで捉えるというプロジェクトについては残念ながら装置の立ち上げにほぼエフォートを割いてしまったために成果が得られていないが、次年度以降に挑戦する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
革新的酸化剤を用いて導入したヒドロキシ基に対して様々な化学修飾が可能であり、種々の化学官能基を導入した新規グリッドの開発が進んでいる。一方で、新しいグリッドを搭載してデータ収集を可能とする装置の立ち上げにも目途が立ちつつある。新たに導入したクライオ電顕の装置(日本電子社製CryoARM200)を用いて研究目的である破傷風毒素の酸化型と還元型の構造解析に取り組む予定である。なお、既に高純度に精製したサンプルを少しずつ調製し、ストックすることができている。先ずは還元型の破傷風毒素をグリッド上に固定化し、構造解析が可能か検討する予定である。
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[Journal Article] A panel of nanobodies recognizing conserved hidden clefts of all SARS-CoV-2 spike variants including Omicron2022
Author(s)
Maeda R., Fujita J., Konishi Y., Kazuma Y., Yamazaki H., Anzai I., Watanabe T., Yamaguchi K., Kasai K., Nagata K., Yamaoka Y., Miyakawa K., Ryo A., Shirakawa K., Sato K., Makino F., Matsuura Y., Inoue T., Imura A., Namba K., Takaori-Kondo A.
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Journal Title
Communications Biology
Volume: 5
Pages: 669
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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