2024 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電顕を用いた時分割構造解析による破傷風毒素の膜侵入機構解明
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23K23821
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 豪 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (20263204)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安居 輝人 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 博士研究員 (60283074)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 破傷風毒素 / クライオ電顕 / ダイナミクス / 抗体複合体 / 時分割解析 |
| Outline of Annual Research Achievements |
破傷風毒素(TeNT)は極めて強い神経毒であり、中枢神経系に選択的に作用するが、その分子機構の詳細は未解明であった。本研究では、TeNTが還元状態から酸化状態へと移行する際に膜透過ドメイン(Hn)が大きく回転し、S-S結合の形成とともに活性型へ変化する過程に注目し、クライオ電顕を用いた時分割構造解析によってそのメカニズムの解明を試みた。令和6年度より本格稼働を開始したCryoARM200を用い、pH条件と酸化還元状態を精密に制御した凍結試料の作製系を確立し、蛋白質のリジンを捉えてグラフェン膜上に固定化できるEG-Grid(Epoxidized_Graphene_Grid)やHisタグ認識型のグリッドを開発し、それらを用いたタンパク質固定化条件の最適化に成功した。さらに、既に取得済みのヒト由来機能性抗体との複合体について、抗原結合による構造変化を解析し、抗体がTeNTの活性化を阻害する分子機構の一端を明らかにした。また、膜透過ドメインの一部を蛍光プローブで置換した変異体を作製し、酸化条件下での局在変化を可視化する実験系も確立しつつある。これらの成果により、TeNTが中枢神経特異的に活性化される構造的理由について、酸化によるドメイン再編成と抗体による構造拘束の観点から新たな仮説を提示するに至った。なお、本研究の推進にあたってEG-Gridの開発を進めるにあたって高分子の表面酸化技術の開発も進めた。 本研究は、神経毒素の膜透過機構や中枢神経選択性の理解を飛躍的に進展させるとともに、構造情報に基づいた中和抗体や阻害剤の開発にも貢献するものであり、今後の神経毒性制御や感染症治療への応用が期待される。
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