2022 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリア光センサーのプロトン化状態の解明に資する構造基盤
Project/Area Number |
22H02562
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
三島 正規 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (70346310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 侑 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30616230)
宇梶 裕 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80193853)
永江 峰幸 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (90735771)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | NMR / X線結晶構造解析 / シアノバクテリオクロム / RcaE |
Outline of Annual Research Achievements |
RcaEタンパク質は、緑色・赤色光照射によって2つの安定な緑色光吸収型と赤色光吸収型の間を構造変換(光変換)する。その構造変化は、リンカー領域を経てキナーゼドメインに伝わり標的タンパク質をリン酸化することでシグナルが伝達される。申請者らは、X線結晶構造解析、NMR解析等から、赤色光吸収型の立体構造と光変換による発色団のプロトン化・脱プロトン化を構造レベルで明らかにしている。本研究では、さらに、緑色光吸収型の立体構造や発色団まわりのタンパク質側のプロトン化状態を明らかにし、光変換のメカニズムを解明することを目的に研究に取り組んだ。 代表者の三島と分担者の永江により、緑色光吸収型での高分解能のX線結晶構造解析を目指して、種々のコンストラクトを作成し、結晶化を行った。機能に重要なS2-S3ループの柔軟性が結晶化を阻害していると推定され、結晶が成長しない可能性も十分考えられたことから、より長い領域での(むしろ全長に近い長さ)のコンストラクトの方が結晶化に適する可能性も考え 、結晶化に適すると想定される領域のコンストラクトを設計し、結晶化サンプルを調製した。結果として、以前、赤色光吸収型でX線結晶構造解析に成功していた発色団を含むGAFドメインの領域を、さらにN末端側に伸ばしたコンストラクトで、結晶化、結晶構造解析に成功した。 また発色団のPCBが脱プロトン化する部位として、NMRのスペクトル計算からB環と考えているが、脱プロトン化部位がどこであるか、実験的に決着をつけるためPCBのNMR信号の完全帰属を行う必要があり、この帰属には環特異的安定同位体標識PCBの合成が必要である。この合成は分担者の宇梶が担当し、微量であるが、環特異的安定同位体標識PCBの調製に成功した。分担者の広瀬はアポ体で調製したRcaEのGAFドメインにPCBを取り込ませ、測定試料を調製する工程の最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑色光吸収型でのX線結晶構造解析、 環特異的安定同位体標識PCBの調製に成功するなど、研究目標に掲げた2/3ほどの項目を達成していることから、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目では、さらに高分解のX線結晶構造解析を推し進める。また並行して、より結晶を大きく成長させることで、水素の位置まで解析可能な中性線結晶構造解析に取り組む。NMRでは発色団PCBの完全帰属を目指して解析を行う。PCBの各原子の化学シフトはPCBの電子状態を明敏に反映することから、RcaEの極大吸収波長の理解に大きく貢献することが期待できる。
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