2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanistic study of quaternary structure changes of a LysR- type transcriptional regulator
Project/Area Number |
22H02563
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
千田 俊哉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (30272868)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | LysR型転写制御因子 / 転写活性化機構 / 結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / 転写因子 / プロモータ / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
バクテリアに広く分布するLysR型転写制御因子(LTTR)の転写活性化機構は、主として生化学的な手法により解析されてきたが、これまでに得られている生化学的な結果を説明する分子メカニズムは30年以上にわたり不明のままである。これに答える為には、LTTRとプロモータDNA複合体の立体構造に加え、誘導物質によりどのようにLTTRの構造が変化しRNAポリメラーゼと相互作用するかなどに関して、原子レベルの構造的理解が不可欠である。そこで本研究では、我々のグループが長年研究してきたLTTRであるCbnR4量体を取り上げ、結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡(電顕)の解析技術を用いて、(1)CbnR4量体の構造多型解析、(2)CbnR4量体と誘導物質(ムコン酸)との複合体構造解析、(3)CbnR4量体、誘導物質(ムコン酸)、プロモータDNAとの3者複合体構造解析、(4)プロモータDNA上のABS配列とCbnRのDNA結合ドメインとの複合体構造解析などを達成することを目指している。初年度は、これら4つのうちで最も困難かつ時間がかかると考えられる、(3)CbnR4量体、誘導物質(ムコン酸)、プロモータDNAとの3者複合体構造解析のための試料調製に集中して研究を進めた。これまでの研究からCbnR4量体-プロモータDNAの結晶構造は低分解能でしか得られていないこと、今後に考えられるRNAポリメラーゼを含んだ複合体の構造解析へのスムーズな移行のため、クライオ電顕による解析を目指した試料調製を行った。その結果、外来DNAの混入の少ないCbnRの精製法を確立し、透析とゲル濾過を組みあわせてCbnR4量体-プロモータDNA複合体の調製などを行うことができた。電子顕微鏡を用いた負染色像の撮影では、CbnR4量体らしき像を確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要欄で述べたように、初年度はCbnR4量体、誘導物質(ムコン酸)、プロモータDNAとの3者複合体のクライオ電顕による単粒子解析に向けた試料調製を行った。過去の研究では、CbnR4量体-プロモータDNA複合体の結晶構造を決定しているが、CbnR4量体が非常に扱いにくいタンパク質で結晶化の再現性が低かったことなどから、安定してCbnR4量体-プロモータDNA複合体溶液が取得できる条件の確立を目指した。その結果、従来のCbnR4量体精製の条件では大腸菌由来のDNAの混入が多いことが明らかになった。高分解能の解析を行う為には、このような外来DNAの混入は試料の不均一性の原因となるため好ましくない。そこで、まずは大腸菌DNAの混入をできるだけ減らすための方法を検討した。アフィニティ精製の条件を再検討することで、外来DNAの混入を適切なレベルまで減らすことができた。また、数回の実験の結果、このように高度に精製されたCbnR4量体を再現性よく取得することが可能なことを確認した。次に、複合体調製の条件確立を行った。CbnR4量体は高濃度のNaClおよびイミダゾールが存在しないと溶液中で極めて不安定である。高濃度のNaClはDNAとの相互作用を阻害するため、CbnR4量体-プロモータDNA複合体は透析法により、NaClおよびイミダゾールの濃度を段階的に下げることで調製した。部分的にCbnR4量体が沈殿してしまうが、単粒子解析に十分な量の複合体をゲル濾過により単離可能である。また、負染色像でもCbnR4量体らしき粒子を確認できた。ただし、DNAに関しては、長さが短いためか負染色像からは確認が困難であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度はサンプル調製に注力したが、2023年度はクライオ電顕による単粒子解析のためのグリッド作成条件の最適化、さらにはクライオ電顕によるデータ収集、解析までを目指す。具体的には、最適化の余地が残っているCbnR4量体-プロモータDNA複合体の調製条件を、プロモータDNAの長さ、CbnR4量体との量比(モル比)等をゲル濾過や負染色法による画像化を行いつつ最適化する。CbnR4量体の構造解析においては、生理条件での取り扱いが極めて難しいことが常に問題になっており、低塩濃度下で如何にCbnR4量体を安定に扱うかが重要である。DNAとの複合体形成はその1つの方法であると考えられるが他にも方法を考える必要がある。今後の研究の方向性を考えた場合、RNAポリメラーゼとの複合体形成も視野に入れて研究を進めたい。 これに加え、今年度は初年度に行わなかった(i)CbnR4量体の構造多型解析、(ii)CbnR4量体と誘導物質(ムコン酸)との複合体構造解析、(iii)プロモータDNA上のABS配列とCbnRのDNA結合ドメインとの複合体構造解析など、複合体の構造変化解析に有用な構造情報の取得を開始する。(i)の多型解析に関しては特に困難はないと考えられる。(ii)に関しては相互作用解析も含めて行う予定であるが、過去に結晶化のスクリーニングにより結晶は得られるものの、得られた結晶の構造解析しても誘導物質の結合は確認できず、誘導物質複合体の構造情報を得ることができていない。CbnRの分子量が12万に達すること、C2の対称性があることなどからクライオ電顕を用いた単粒子解析を目指す。(iii)に関しては、結晶化のスクリーニングを行うことで構造解析の可能性を探る。
|