2022 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアべん毛輸送ゲート蛋白質FlhAによる選択的蛋白質輸送のしくみの解明
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22H02573
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南野 徹 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (20402993)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 細菌 / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の運動器官であるべん毛を作るために必要な蛋白質輸送装置はべん毛の構築過程に応じて輸送基質特異性を段階的にスイッチする。さらに、べん毛輸送装置は細菌のライフサイクルや環境変化に応じて自身の作動機構を巧みに切り替える。本研究は、このように極めてユニークな輸送装置の機能を担っているFlhAの動作機構を徹底的に究明することを目的とする。本年度の主な成果は以下に示す。 flhA変異株の機能解析から、FlhAのC末細胞質ドメイン(FlhAc)に存在するGYXLIモチーフの構造変化により、輸送装置の基質認識モードがフック型から繊維型へスイッチすること、FlhAcの構造変化はFliKやATPaseリング複合体に依存することが明らかとなった。FlgK, FlgL, FliC, FliDの4種類の蛋白質は繊維型輸送基質蛋白質で、フックが完成した後に、FlgK, FlgL, FliD, FliCの順番で運び出される。FlhAcの404番目のバリン残基がメチオニンに変異すると、FliCは効率よく輸送されたが、FlgK, FlgL, FliDはほとんど輸送されなかった。以上の結果から、V404M変異により繊維型タンパク質に対してFlhAcの基質特異性が大きく変化することが示唆された。 輸送装置に装備されている膜電位センサーを同定するために、ΔfliH-fliI flhB(P28T)変異体から膜電位依存性が変化した変異体を多数単離した。DNAシーケンス解析から、膜電位センサーはFlhAに加え、FlhBにも装備されていることが示唆された。 クライオ集束イオンビーム走査型電子顕微鏡を用いて、観察に適したサルモネラの薄層を作製する為の様々な条件検討を行った結果、150μmまで薄く削る方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異体解析から、FlhAcによる基質認識とその選別のしくみを概ね明らかにすることができた。さらに、輸送装置に装備されている膜電位センサーを同定できた。計画当初から大幅に遅れていたが、2023年8月末までに観察に適したサルモネラの薄層を作製する条件をほぼ決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膜電位依存性が変化したflhAおよびflhB変異体の機能解析を進めるとともに、クライオ電子線トモグラフィー法により、FlhAが実際に働いている現場での構造解析を実施する。
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