2023 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアべん毛輸送ゲート蛋白質FlhAによる選択的蛋白質輸送のしくみの解明
Project/Area Number |
22H02573
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南野 徹 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (20402993)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 細菌 / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の運動器官であるべん毛を作るために必要な蛋白質輸送装置はべん毛の構築過程に応じて輸送基質特異性を段階的にスイッチする。さらに、べん毛輸送装置は細菌のライフサイクルや環境変化に応じて自身の作動機構を巧みに切り替える。本研究は、このように極めてユニークな輸送装置の機能を担っているFlhAの動作機構を徹底的に究明することを目的とする。本年度の主な成果は以下に示す。 1.FlhAのC末細胞質ドメイン(FlhAc)は9量体リングを形成してべん毛蛋白質の輸送を巧みに制御する。FlhAcに存在するGYXLIモチーフの変異体解析から、FlhAcはべん毛輸送ATPase複合体の助けによりべん毛形成時に起こる基質認識エラーを適切に修正することが示唆された。FlhAc変異体解析からFlhAの膜貫通ドメインとFlhAcを繋ぐリンカー領域に存在するGlu-351が隣接するFlhAcサブユニットのArg-391との間で塩橋を形成することにより、繊維形成に関わる蛋白質の輸送が開始することを突き止めた。 2.これまでに、FlhAcリング複合体は細胞膜から遠く離れた位置に存在することが報告されている。FlhAcの404番目のバリンがメチオニンに置換すると、べん毛輸送ATPase複合体欠損株の運動機能が膜電位依存的に部分的に回復することを突き止めた。この結果から、FlhAcリング複合体は細胞膜近傍に近づいて機能することが示唆された。 3.膜電位依存性が変化したFlhBの変異体解析から、FlhBのC末細胞質ドメイン(FlhBc)が膜電位依存的に構造変化し、その結果輸送基質蛋白質が輸送ゲート内へ挿入されることが示唆された。クライオ電子顕微鏡により輸送ゲート複合体を構成するFliPQR複合体の構造を3Å分解能で決定することに成功するとともに、FlhBcがFliPQR複合体の近傍に位置することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GYXLIモチーフの変異体解析から、FlhAcによる基質認識とその選別のしくみを明らかにすることができた。膜電位依存性が変化したFlhAおよびFlhB変異体の解析から、FlhAcリング複合体やFlhBcは膜電位依存的に構造変化し輸送ゲート近傍に近づくことを突き止めた。さらに、クライオ電子顕微鏡によりFliPQR複合体の原子モデルを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膜電位依存性が変化したflhAおよびflhB変異体の機能解析を進めるとともに、クライオ電子線トモグラフィー法により、FlhAやFlhBが実際に働いている現場での構造解析を実施する。
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