2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of human LINE-1 retrotransposition
Project/Area Number |
22H02600
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三好 知一郎 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (60378841)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | L1 / レトロトランスポゾン / 転移 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
生命の設計図であるゲノムの変化は、長期的にみれば集団の多様性を生み出し進化の原動力となりうるが、短期的には疾患につながる遺伝子破壊も引き起こす諸刃の剣である。Long INterspersed Element-1(LINE-1またはL1)は、転写された自身のRNAをDNAに逆転写することでゲノム上を移動(=転移)するレトロトランスポゾンである。L1の転移は遺伝子破壊、染色体欠失や転座などゲノム不安定化を誘導し、様々な疾患原因ともなる。しかし、L1の転移プロセスとその制御因子はまだよくわかっていないため、L1が引き起こすゲノム変化の機序もまだ解明されていない。そこで本研究は、プロテオミクス解析と遺伝学的スクリーニングの手法を組み合わせてL1の制御因子を単離し、それらの機能解析を積み重ねることで、未解明のL1転移過程を明らかにする。 本研究では、主に下記3つの研究課題に取り組んでいる。 1.核内におけるL1のゲノム挿入機構の解明 2.細胞質におけるL1複合体制御機構の解明 3.遺伝学的スクリーニングによる転移制御因子の探索 本年度は、特に2に着目してL1転移を制御する自然免疫応答因子の機能解析を中心に行い、下記で記載するように、その中の1であるHELZ2について詳細なL1抑制機構を明らかにした。これらの研究を積み重ねることで、将来的には転移を人為的に制御する手法の開発や、L1が関与する疾患・ゲノム不安定化の抑制にむけた応用研究にもつながることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
L1は、転移に必要なORF1とORF2の2つの蛋白質をコードする。L1は転写後、RNA結合蛋白質であるORF1が細胞質でL1 RNAに結合してribonucleoprotein (RNP)複合体を形成し、その後、逆転写酵素ORF2を伴い核内に移行し、最終的にゲノム内に侵入すると考えられている。これまでに、HeLa細胞から精製したL1 RNP複合体に対するプロテオミクス解析からすでに複数のインターフェロン応答遺伝子産物が同定している。さらにこれらのインターフェロン応答遺伝子産物は、顕著にL1の転移を抑制する機能をもつことがわかった。本年度は、新規に同定したこれらの因子の中から、特にRNAヘリカーゼであるHELZ2に注目してその機能解明を行ったところ、HELZ2はL1 RNAの5’非翻訳領域を認識し、L1 RNAの分解を通じてL1 の転移頻度を抑制することが明らかとなった。一方で、L1 RNAはインターフェロン応答を誘導すること、HELZ2の過剰発現によってこのインターフェロン応答が抑制されることも見出した。以上の結果から、発現したL1転写産物に対して、細胞がインターフェロン応答遺伝子産物を駆使した生体防御機構を発動し、標的となるL1複合体を分解することで、宿主に不利となるゲノム不安定化を抑制する分子機構の一端が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の予定について各課題ごとに記す。 1.核内におけるL1のゲノム挿入機構の解明:L1転移を制御する因子、特にDNA修復因子に着目し、それぞれのノックアウト細胞の作成にとりかかる。これらの細胞でL1転移がどのように変化するのか解析を行う。 2.細胞質におけるL1複合体制御機構の解明:ORF1pと相互作用するHELZ2以外の自然免疫応答因子にも解析範囲を広げて、L1と宿主の拮抗関係とその動的制御機構についての理解を深める。 3.遺伝学的スクリーニングによる転移制御因子の探索:これに用いるためのCas9恒常発現株を取得し、その後スクリーニングへとつなげる。
|
Research Products
(7 results)