2022 Fiscal Year Annual Research Report
高密度かつ機能的な定量プロテオミクスによる細胞老化の分子基盤の解明
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22H02607
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松本 雅記 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60380531)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2項目を実施した。 I 高深度精密プロテオーム解析技術基盤の確立:a)連結体タンパク質ライブラリー構築:すでに取得済みの高感度ペプチド情報から、代謝経路やシグナル伝達経路などに関連したタンパク質の情報を含む連結体タンパク質をコードする人工遺伝子をデザインした。b)多重定量タグシステムの開発:多数の連結体を試料内で識別・定量するために、大規模な定量用ペプチドタグ (QuantiCode) を開発した。ヒトプロテオームに存在しない人工配列をデザインし、これを化学合成したものを対象に質量分析計で評価し、混合(=多重化)しても全て特異的に識別できる配列を選定することが可能であった。さらに、QuantiCodeのみで構成される連結体 (= Quantimer) をデザインし、組み換えタンパク質として高度に精製したものを得た。c)高深度・高出力質量分析技術開発:大規模内部標準タンパク質ライブラリーとdata-independent acquisition (DIA)を用いた高深度プロテオミクスの技術を組み合わせることで、高速かつ大規模にタンパク質絶対定量を実施できる手法を確立した。また、DIAにて非検出ペプチドに対して高分解ターゲットプロテオミクス(PRM法)を適用するSequentially Linked Mass-spectrometry (SLiM) 法を確立した。 II. 細胞老化系の作出と評価:ヒト正常線維芽細胞(TIG-3)を用いて、複数の手法(テロメア短縮、がん遺伝子強制発現、酸化ストレスなど)によって細胞老化を誘導した。細胞形態、酸化ストレスマーカー、細胞核インテグリティーなどを計測し細胞老化表現型を定量化した。さらに、これらの老化と正常細胞におけるタンパク質発現を網羅的に定量計測し、異なる手法で得られた老化細胞の類似性等を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は使用する質量分析計に複数の不具合が発生し、原因の特定ならびに修理に必要なパーツの調達に時間を要したため、一時的に老化細胞のプロテオーム解析が中断した。しかしながら、この間に、前倒しでデータ解析法の確立や多重タグのデザインなどを進めることができた。装置復旧後は停滞していた実験を集中的に進めたため全体の研究進捗の遅延を最小限にとどめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに目的としていた老化細胞の確立およびプロテオーム解析のための要素技術の開発は完了している。来年度は、これらの技術を有機的に組み合わせることでより機能的なプロテオーム情報を取得する実験系の構築を進める予定である。そのためには、極めて複雑で大規模なデータをどのように解析・可視化し、細胞老化を説明しうる知識発見につながるかの方策が必要となる。各種オミクスデータ間、あるいは表現型とオミクスデータ間の相関解析を行うことで細胞老化と関連した変化の同定を目指す。
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