2023 Fiscal Year Annual Research Report
高密度かつ機能的な定量プロテオミクスによる細胞老化の分子基盤の解明
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22H02607
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松本 雅記 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60380531)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化はがん抑制機構としての役割に加えて、最近では個体の老化現象にも関わる重要な現象である。しかしながら、細胞老化自体を誘導・維持するメカニズムについては未解明の点が多く残されている。本研究では、タンパク質動態を定量的に計測可能な機能的プロテオーム解析基盤の構築と、それらを用いた老化細胞における包括的なプロテオーム状態計測を行う。今年度は、老化細胞のプロテオームマップの構築を行った。高深度プロテオーム解析法を用いて複数の手法(テロメア短縮、がん遺伝子強制発現、酸化ストレスなど)で老化誘導した細胞におけるタンパク質の包括的な定量を実施した。代謝物の動態も並行して計測しタンパク質階層との統合解析を実施した。その結果、細胞老化およびその維持に重要なサブネットワークの同定した。特に、核酸代謝系酵素やプロリン合成経路などが細胞老化の誘導や維持において重要な役割を担っていることが判明した。また、老化細胞におけるタンパク質動態計測を実施した。Pulsed-SILAC法によるタンパク質半減期計測の結果、意外なことに核膜孔タンパク質のターンノーバーが遅くなっていることが判明した。また、BONCAT法による新生タンパク質の定量比較の結果、SASP因子の新規合成が増加しているのに対し、全体的にタンパク質合成は低下している可能性が示唆された。また、これらの動態計測法と細胞分画法と組み合わせることでオルガネラや複合体形成に伴うタンパク質動態キネティクスデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初計画していた全ての実験を実施することができた。結果も概ね期待していたものであり細胞老化におけるプロテオームの動態変化を含めて多数の新たな知見をえることができた。唯一、共通機器である超遠心機の故障が発生し修理不能であることが判明したため、超遠心機を用いたオルガネラ分画は断念したが、界面活性剤による可溶性を利用した化学分画法を代替法として利用することで、老化細胞におけるタンパク質局在の全体像の把握を達成することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
高深度ばプロテオーム発現や動態情報を取得するための基盤技術の確立は今年度でほぼ完了した。これらの手法で得られるデータはそれぞれが示すプロテオーム意義は異なるものの、互いの間には密接な関連が期待される。そこで、これらの機能プロテオーム解析の手法を組み合わせて使用することが重要である。例えば、細胞内局在とタンパク質ターンノーバー解析の組み合わせによってタンパク質動態が細胞内局在でどの様に変化するかを解明できる。また、公共データベースを用いたデータ解析戦略である、Open Source Intelligence (OSINT)を取り入れることで、細胞老化の誘導や維持に関するシステム学的な情報の抽出を試みる。
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Research Products
(21 results)