2023 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエマクロファージを介したがん微小環境制御の遺伝的基盤
Project/Area Number |
22H02616
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80515065)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | “非自律的”腫瘍成長 / がん微小環境 / 血球細胞 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんの発生・進展において、多段階的な突然変異の蓄積による遺伝的変化に加えて、がん原性細胞を取り巻く周囲の細胞との相互作用を介した“細胞非自律的”な変化が重要な役割を果たすことが分かってきたが、その分子基盤はいまだ不明な点が多い。研究代表者はショウジョウバエをモデル系として、細胞間相互作用を介したがん制御機構の解析をこれまで行ってきた。前年度までに、進化的に保存された細胞極性遺伝子scribble(scrib)の機能喪失変異により悪性化したRasV12腫瘍(RasV12/scrib-/-悪性腫瘍)において、ショウジョウバエ血球細胞ヘモサイト(哺乳類マクロファージ相当)が死にゆくRasV12/scrib-/-細胞を貪食していること、および、このヘモサイトによる貪食が周囲の生きたRasV12/scrib-/-細胞の増殖を促進する可能性を見いだした。本年度は、貪食を介した非自律的腫瘍成長の分子機構を遺伝学的に解析した。その結果、死にゆく細胞に応答した“貪食”ヘモサイトが炎症性サイトカインUpd3を放出し、これにより周囲のRasV12/scrib-/-細胞でJAK/STATシグナルが活性化して細胞増殖が亢進することが明らかとなった。また、貪食マクロファージが極性崩壊細胞群に対しては、細胞排除を促進する役割を果たす(がん抑制性の機能を果たす)ことも分かってきた。これらの結果は、貪食マクロファージが状況に応じてがん抑制的にも促進的にも働く可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、血球細胞ヘモサイトが貪食を介して非自律的な腫瘍成長を促進するという新しい現象の分子機構の一端を明らかにすることに成功した。また、この新規現象の全容解明を目指し、シングルセルRNAsequence解析をすでに開始しており、研究推進が順調に行われていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
“貪食”ヘモサイトが腫瘍成長を引き起こす仕組みを明らかにするシングルセルRNAsequence解析を行う。また、ヘモサイトが腫瘍内部に入り込むメカニズムについて、RNAiスクリーニングおよびライブイメージング解析により明らかにする。これにより、がんが発生・進展していく過程で「ヘモサイトを介した腫瘍成長促進」機構が発動される仕組みを明らかにする。
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