2023 Fiscal Year Annual Research Report
有性生殖における生命の始まりを制御する分子メカニズムの解明
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22H02635
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
井上 直和 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50379096)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 受精 / 精子 / 卵子 / 配偶子融合 / DCST1/2 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の受精を成立させるためには、精子が卵子に接着してからごく初期の段階で、精子側のIZUMO1 (Inoue et al., Nature 2005) と卵子側のIZUMO1受容体JUNOの相互作用が必要不可欠である。このことは、IZUMO1-JUNO複合体の細密立体構造が決定されている点で実証されている (Ohto et al., Nature 2016)。しかし配偶子融合は、IZUMO1-JUNOの相互作用により活性化されたのち、複数の因子群からなる分子間相互反応の結果成立することが推測されるため (Inoue et al., Nat Commun 2015)、IZUMO1/JUNOの2因子だけでこれらの複雑な現象を説明するのは難しく、その仕組みは十分に解明されていない。そのようななか、最近、我々は世界で初めて無脊椎動物と脊椎動物に共通する配偶子融合必須因子DCST1/2を同定した (Inoue et al., eLife 2021)。驚いたことにDCST1/2は、IZUMO1-JUNO制御系とは独立した制御系で配偶子融合に寄与している。このように配偶子融合の成立には、動物種を超えて、一瞬の反応のために極めて多層で精巧な分子メカニズムが存在すると考えられる。 本年度は、哺乳類の配偶子融合に必須な因子群 (精子のIZUMO1, SPACA6, TMEM95, FIMP, DCST1/2と卵子のCD9, JUNO) のノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの配偶子を利用して、精密構造解析、分子ダイナミクス、超高解像度顕微鏡観察などの解析に基づき、これら因子群の生理機能の解明を目指した。その結果、未公表データではあるが、着実に真の配偶子融合の分子メカニズムに迫る解析結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5度までに、実験計画に必要な実験系の構築や遺伝子改変マウスを含めた生体実験材料が揃い、解析は順調に進んでいる。また2023年7月には、国際学会Gordon Research Conference “Fertilization and Activation of Development: The Basics of Gamete Biology and Early Development and Their Clinical Implications” にて招待講演による研究成果発表を行い、受精の新たな概念を創造する研究として大きな反響を得た。次年度以降は、研究成果をさらに積極的に国際サイエンスコミュニティーや国民に向けて発信するとともに、研究計画に沿って世界初の発見を成し遂げられるように尽力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進展しているため、特段の計画変更はない。次年度以降は、真の配偶子融合の分子メカニズムに迫る包括的な研究を展開したい。
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