2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物固有オルガネラである独立型TGNの形成機構とその生理学的意義の解明
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22H02643
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
植村 知博 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90415092)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | TGN / 病原菌応答 / 超解像イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の細胞内に存在する単膜系オルガネラ間の輸送は、膜交通と呼ばれる輸送システムによって厳密に制御されている。中でも、トランスゴルジ網(TGN)は、ゴルジ体以降の目的地に運ばれる積荷タンパク質の選別をおこなう重要なオルガネラである。我々はTGN上に分泌輸送と液胞輸送を担うサブ領域(輸送ゾーン)が存在することを発見したが、TGN上で機能の異なる輸送ゾーンがどのように構築され、どのように独立型TGNが形成・維持されるのかについては不明である。そこで、(ⅰ)超解像ライブイメージング観察による独立型TGNの観察、(ⅱ)ケミカルバイオロジーによる分泌輸送ゾーン及び独立型TGNの形成機構の解明、(ⅲ)分泌経路における独立型TGNの生理的な役割の解明、を実施することで、輸送ゾーンと独立型TGNが植物のみに存在することの意義について理解することを試みた。本年度は、超解像ライブイメージングによりTGN-エンドソーム間の輸送は、TGN上での液胞輸送ゾーンにおけるオルガネラコンタクトによっておこなわれている可能性を明らかにした。また、うどんこ病菌の感染時には、葉の表皮細胞だけではなく、葉肉細胞における分泌経路も重要であることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の(ⅰ)- (ⅲ)の研究を推進した。 (ⅰ)超解像ライブイメージング観察による独立型TGNの観察:超解像ライブイメージング顕微鏡(SCLIM)でTGN-エンドソームの挙動を詳細に観察した。その結果、TGN-エンドソーム間の輸送は、分泌経路のように独立型TGNを分離させて積み荷タンパク質を輸送するのではなく、TGN-エンドソームのコンタクトにより積み荷の輸送がおこなわれているとが示唆された。 (ⅱ)ケミカルバイオロジーによる分泌輸送ゾーン及び独立型TGNの形成機構の解明:約2万種類の化合物ライブラリーをうち約1000種類の化合物について、独立型TGNの形成を変化させる化合物の探索をそれぞれ共焦点レーザー顕微鏡下でおこなった。しかしながら、これまでの候補化合物に加えて新たな化合物を発見することはできなかった。 (ⅲ)分泌経路における独立型TGNの生理的な役割の解明:我々が確立した病原菌応答を利用した分泌輸送の実験システムをモデルとして、分泌輸送ゾーン及び独立型TGNの高次生命現象における役割について明らかにするため、ペクチンリアーゼに注目して、その可視化ラインの作出をおこなった。また、TGN局在型SNAREタンパク質(SYP4)の組織特異的な発現ラインを用いて、病原菌等応答の組織レベルでの観察を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的と達成するために以下の方針で研究を推進する。 (ⅰ)超解像ライブイメージング観察による独立型TGNの観察については、よりシンプルなで高精度の解像度での知見を得るために、シロイヌナズナに加えてタバコBY-2で可視化ラインを作出し、超解像ライブイメージング顕微鏡2(SCLIM-2)での観察を試みる。 (ⅱ)ケミカルバイオロジーによる分泌輸送ゾーン及び独立型TGNの形成機構の解明については、引き続き、化合物のスクリーニングを実施し、分泌輸送ゾーン及び独立型TGNの形成が異常になる化合物を探索する。 (ⅲ)分泌経路における独立型TGNの生理的な役割の解明については、うどんこ病菌感染時におけるTGNの機能の生理的な役割を明らかにするために、組織特異的なSYP4の役割について明らかにする。
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