2022 Fiscal Year Annual Research Report
多様な記憶機能を担うドパミン作動性神経の放出機構解析
Project/Area Number |
22H02665
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
上野 耕平 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 副参事研究員 (40332556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 慎太郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主任研究員 (30631965)
宮下 知之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (70270668)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Drosophila / dopamine / memory |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエ(以下ハエ)の匂いと電気ショックによる嫌悪性匂い記憶において、ドパミンは必須の神経伝達物質である。我々はこれまでドパミンの放出には2つの放出機構、すなわちドパミン作動性神経の活動による放出と(古典的放出)、ドパミンを受容する神経細胞の活動性による放出(オンデマンド放出)があることを報告してきた。この2つの放出が実際の記憶形成や保持、想起のフェイズにおいてどのような使い分けがなされているのかを明らかにすることが本研究の目的である。本年度はそのためのツール開発に重点を置いた2つの研究を行ってきた。 1つは、CRISPR-Cas9とnanobodyを駆使して、古典的放出とオンデマンド放出それぞれに必要な分子が、実際にハエの嫌悪記憶に重要なドパミン作動性神経終末に局在しているのかどうかを明らかにした。もう1つは、遺伝薬理学的手法による古典的放出とオンデマンド放出それぞれの分子の活性を抑制したときに、ドパミン放出が実際に変化するのか否かを明らかにした。 既に先行研究から古典的放出分子がドパミン作動性神経終末に局在していることは明らかであったが、オンデマンド放出分子に関しては知見が無かった。本研究により確かにオンデマンド放出分子はドパミン作動性神経終末に局在していることが見出された。さらに我々は、遺伝薬理学的手法の開発に成功し、少なくともオンデマンド放出分子を抑制すると記憶形成時におけるドパミン放出は抑制されることを見出した。現在、これらの知見を基に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古典的放出およびオンデマンド放出に必要な分子局在に関しては順調に成果が得られている。 一方、それぞれの放出の抑制解析に関しては、遺伝薬理学的手法によるオンデマンド放出の抑制とそれによるドパミン放出の低減が観察されたが、古典的放出における光遺伝学的手法による抑制は機器の遅れがあり、次年度へ繰越を行った。しかし、最終的に機器は完成し、古典的放出に重要な神経活動の抑制を行うことができるようになり、解析は順調に進んでいるため、このように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、得られた解析結果を基に論文作成を進めて行く。また、オンデマンド放出は細胞内Ca2+貯蔵からの放出が関与すると思われるが、近年この貯蔵Ca2+をモニタできるプローブが開発された。これを利用し、さらに研究成果を堅牢なものにしていくよう努める。
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Remarks |
https://www.igakuken.or.jp/project/detail/memory.html
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