2022 Fiscal Year Annual Research Report
シス因子による哺乳類の新しい性決定メカニズムの解明
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22H02667
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
黒岩 麻里 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20372261)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Y染色体 / SRY / トゲネズミ / XO |
Outline of Annual Research Achievements |
Y染色体と性決定遺伝子SRYを消失したアマミトゲネズミにおいて、SRY 遺伝子に依存しない有胎盤哺乳類の新しい性決定メカニズムを明らかにする。我々は、これまでに本種の性差が見られるゲノム領域を探索し、SOX9遺伝子の約430 kb上流にオス特異的な重複が存在することを発見した。この重複ユニット内に精巣特異的エンハンサーが存在し、エンハンサーが重複することでSRYなしにSOX9の発現が上昇し、精巣分化が起こりオスとなることを仮定した。本研究では、重複することでSOX9の転写を上方制御するエンハンサーと、そのエンハンサーを標的とする転写因子を特定し、SRY不在下におけるシス因子による性決定メカニズムを解明する。SRYに依らない性決定メカニズムの報告はこれまでに無く、さらにシス因子による性決定メカニズムの発見は、哺乳類においては初めてのものである。 本年度は、アマミトゲネズミのオスのみが持つSOX9遺伝子上流の重複領域34 kbを、マウスの相同配列と組換えたノックインマウスの作成に成功した。マウス作成は、研究協力者の大阪大学 伊川正人教授らにより行われた。作成されたマウスを研究代表者の所属機関である北海道大学に導入し、交配により重複をヘテロでもつXX型個体を得て、外部および内部生殖器官の形態を解剖学的に確認した。また、ジェノタイピング実験系の確立およびノックインマウスのゲノム配列を解読し、34 kbの重複配列に変異が生じていないかなどの確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ノックインマウスの受け入れ後、マウス個体の死亡や重複を持つ仔が得られない状況があり、個体の産出に予想以上に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
重複をヘテロでもつXX型個体では、精巣を持つなどの生殖器官の性転換が起こることを期待したが、残念ながら成獣では野生型のメスマウスと同じ表現型を示した。今後は、重複をホモでもつXX個体を作成し、生殖器官の解剖学的観察を行う。さらに、SXO9遺伝子の発現が開始する胎齢13.5日の胚を得て、胚生殖腺の形態観察、Sox9およびその他の性分化関連遺伝子の発現を確認する。
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