2022 Fiscal Year Annual Research Report
Functions and molecular hierarchy of epigenome regulators in Drosophila piRNA pathways
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22H02669
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
齋藤 都暁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 教授 (30423396)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | piRNA / ショウジョウバエ / ヒエラルキー / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
レトロトランスポゾンは、生物の次世代継承の脅威となるため、その発現は抑制状態にある。これまでの研究から、piRNAと呼ばれる小分子RNAとPIWIファミリータンパク質の複合体がレトロトランスポゾンの識別と発現の抑制に必須であることが報告されている。本研究はpiRNAによるエピジェネティックな制御機構を解析可能な培養細胞OSCとショウジョウバエ個体を活用し、レトロトランスポゾンの抑制機構を明らかにすることを目的とする。これまで生化学を駆使し、piRNA経路の上流因子候補をいくつか同定し、その分子機能を解析してきた。2022年度は、L(3)mbt遺伝子ノックアウトハエでは、脳などの体細胞株で顕著に生殖細胞由来遺伝子が発現することや、L(3)mbt遺伝子ノックアウトOSC細胞では、生殖細胞由来piRNAが発現することが報告されている。このように、piRNAの異所性発現を防ぐ重要な因子としてL(3)mbt遺伝子は知られていたが、分子機構は不明な点が多かった。今回、L(3)mbt遺伝子のパートナー遺伝子を探索し、CG2662(Lint-Oと命名)を新たに同定した(Yamamoto-matsuda et al. EMBO reports, 2022)。Lint-O遺伝子ノックアウトハエでは、L(3)mbt遺伝子ノックアウトハエと同様に、脳において、生殖細胞で本来特異的に発現する遺伝子群が異所的に発現することを見出した。さらに、腫瘍様の細胞塊が生じることを見出した。Lint-O変異体では生殖巣の体細胞において生殖細胞マーカーであるVasa遺伝子が異所的に発現しており、Lint-OがL(3)mbtと協調的に働く因子であることを生化学および遺伝学を駆使して明らかにした。以上の成果は、ゲノムにおけるpiRNA産生領域の特異性を理解する上で重要な発見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、L(3)mbt遺伝子のパートナー遺伝子を探索し、CG2662(Lint-Oと命名)を新たに同定し、報告した(Yamamoto-matsuda et al. EMBO reports, 2022)。このようにpiRNA産生に関与する遺伝子群の機能解析は順調に進んでおり、今後も、未発表の因子について、論文報告を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、L(3)mbtと協調して働く新規遺伝子CG2662を同定し、Lint-Oと名付け、論文報告した(EMBO reports)。その一方で、piRNA経路は転写段階、核外輸送、細胞質におけるプロセシング、PIWIタンパク質群への結合、PIWI-piRNA複合体によるトランスポゾン制御、と多段階であり、その作動機構の全貌は不明である。今後は、これまで同定したレトロトランスポゾン抑制に働く新規因子SovやCG31510の機能解明を通してpiRNA経路の下流機構解明を果たす。 (計画1) SovおよびCG31510の分子機能解明 これまで申請者は、Sov/CG14438タンパク質が培養細胞OSCにおいてレトロトランスポゾンの抑制に機能することを見出している。また、Sovに結合する新たな因子CG31510も見出しており、これらはZn-finger motifを持つタンパク質であることからDNAと相互作用して働く因子である可能性が高い。昨年度に作成したマウスモノクローナル抗体を駆使し、直接結合する核酸や蛋白質を同定し、さらにクロマチン免疫沈降と次世代シーケンサーによる解析(ChIP-seq)により、相互作用ゲノム領域の特定を行う。既知因子の消失によって各因子のChIP-seqパターンが変動するか検討する。これらの解析結果を統合し、各トランスポゾン抑制因子の機能と相互作用様式を決定する。 (計画2)分子ヒエラルキーの解明 計画1で同定した新規マシナリーがそれぞれ上流と下流のどこに位置づけられるか検討し、さらに相互作用するタンパク質群を絞り込むことで各因子位置づけを決定する。計画1では各因子が転写抑制段階のどこに位置づけられるかクロマチン結合状態を通して理解するのに対し、計画2では、各因子のタンパク質間相互作用や細胞内局在への影響を解析することで、各分子のヒエラルキーを決定する。
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