2022 Fiscal Year Annual Research Report
適応放散のメカニズムを解明する―分散力の進化的変化に注目して
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22H02689
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
山崎 剛史 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (70390755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
小林 豊 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (70517169)
米澤 隆弘 東京農業大学, 農学部, 准教授 (90508566)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 適応放散 / 分散力 / 種分化 / シミュレーション / 分岐年代推定 / 自然史標本 / 系統比較法 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論的研究については、分散力の進化的変化を仮定して構築した新理論に基づき、3つの島集団の個体ベースのシミュレーションを行い、その結果を報告する原稿を執筆した。新理論は、既存理論のもとで謎であった適応放散時の種分化の同期と微小異所的種分化の頻発を容易に説明できた。
経験的研究については、八重山諸島に固有で、新理論に従う進化の実例である可能性のあるオサハシブトガラスCorvus macrorhynchos osaiの調査を行った。具体的には、C. m. osaiの4つの島集団(西表島・石垣島・波照間島・黒島)について、分岐年代が同期するかどうかを確認するため、それらの集団から得られた計118サンプルのゲノム解析(RAD-seq解析、mtDNAのLA-PCR解析)を実施した。また、近縁種であるクバリーガラスC. kubaryi、イエガラスC. splendensのサンプル入手の交渉をスミソニアン博物館とのあいだで進めた。
さらに、カラス類の種分類再検討を行うための基礎研究として、分類形質である音声に嘴形態が及ぼす影響を系統比較法によって評価した。また、自然史標本に基づき、分散力の進化的変化を推定する方法論を確立するため、ケーススタディを実施した。具体的には、小翼羽の形態と翼面の柔らかさを測定し、飛翔能力との関連性を調査した。島嶼域において、無飛翔性の進化を繰り返し起こしたことで知られるクイナ類について、CTを用いた脳形態の復元、初列風切羽の形態の測定を行った。このうち、クイナ類の脳形態の比較結果をJournal of Anatomy誌から出版した。この研究は、脳の大型化と飛翔能力の減少を関連付ける結果となった。翼面の柔らかさに関するレビュー論文をJournal of Robotics and Mechatronics誌から出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的研究については、当初計画していた論文の出版には至らなかったが、原稿はほぼ完成している。経験的研究については、オサハシブトガラスの研究はおおむね順調で、自然史標本を用いる研究は、当初計画していたより多くの重要なケーススタディを実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たにDNA実験のエキスパートを研究チームに迎え入れることで、一層の研究の推進を図る。
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