2023 Fiscal Year Annual Research Report
環境DNAによる沿岸海洋生物多様性の網羅的動態把握に向けた最新技術の実装と検証
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22H02691
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
宮 正樹 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (30250137)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境DNA / 多地点高頻度調査 / メタバーコーディング / 魚類群集 / 種間相互関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
22017年8月から2019年8月まで、房総半島南部の11地点で合計50回の隔週調査を実施し、各地点で採取した海水1リットルを現場でろ過した。フィルター残渣から計550の環境DNAサンプルを得て、これらのサンプルをテンプレートにMiFishプライマーを用いた魚類環境DNAの定量メタバーコーディングを行った。定量されたDNA量に基づき魚類の時空間動態を分析したところ、出現頻度が高い50種の優占種の種間相互関係強度にはさまざまな水温依存性が認めらることが明らかになった(Ushio et al. 2023)。個々の魚類の分布域が海水温の上昇に伴い変化することは経験的に知られていたが、今回の研究では魚類群集レベルでも水温が種間相互関係に影響を与えることが示された。また、2019年11月と2020年6月には、千葉県沿岸域の100箇所でも同様の調査を実施し、房総半島の太平洋岸では、水温の高い夏期に南方系魚類が加わり、その後冬期に消失する様子がデータで示された(Miya et al. in prep.)。また、上記の11箇所における定期調査は2019年9月から月次調査に移行し、2024年3月までに合計106回の調査を実施した。これまでに2023年5月までの96回分の魚類群集データが得られており、現在はデータの時空間分析を進めている。さらに、魚類以外の無脊椎動物についても同様のメタバーコーディング実験を進めているが、魚類と比べて環境DNA濃度が極端に希薄であるため、採水や実験の至適条件を検討する必要があることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
魚類群集の種間相互関係強度に水温依存性が存在するという大きな研究成果を上げることができる一方で、無脊椎動物では環境DNAを用いた生物多様性モニタリングの実施にさまざまな障害があることがわかった。当初想定していた大型生物を中心とした群集モニタリングについては、若干の進展の遅れが認められるため「やや遅れている」との判断にした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き房総半島南部11地点における月別調査を実施し,2025年3月の年度末まで通算118回の採水とろ過を終える。既に魚類環境DNAメタバーコーディング分析が終了した96回分のサンプルに加え、残りの10回分とこれから調査を行う12回分の計22サンプルの魚類環境DNAメタバーコーディング分析を年度内に終了する。計7年半分の大規模データに基づき、中期の魚類群集時空間分析を行い、魚類群集構造や機能のダイナミクスを明らかにする。また、無脊椎動物については、新たなテーマとして取り組めるように、年度内に調査・実験の至適条件について方向性を見いだせるようにする。
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[Presentation] Comparison of fish fauna evaluated using aqueous eDNA, sedimentary eDNA, and catch surveys in Tokyo Bay, central Japan2023
Author(s)
M. Zhu, M. Kuroki, T. Kobayashi, T. Yamakawa, T. Sado, K. Kodama, T. Horiguchi, M. Miya
Organizer
The eDNA Society International Meeting 2023
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