2023 Fiscal Year Annual Research Report
Inference of plant adaptive radiation based on idiosyncratic phylogenetic signals in genomes.
Project/Area Number |
22H02699
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 京都大学, 農学研究科, 教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 教授 (60282315)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リシーケンシング / デモグラフィー推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で解析対象としているシソ科の木本植物であるOxera属は、ニューカレドニアに約500万年前に到来し、その後、適応放散により35種に多様化しているが、これまでの祖先形質推定から、Oxera属植物は乾燥環境適応系統と湿潤環境適応系統に分別できる。本年度は約300万年前から始まったニューカレドニアの乾燥化がOxeraの過去の個体群動態や遺伝的多様性に与えた影響を明らかにするために、湿潤環境適応系統11種と乾燥環境適応系統5種を対象に全ゲノムリシーケンシングに基づく解析をおこなった。PSMC解析によって過去1000万年の有効集団サイズ動態を推定すると共に、遺伝的多様性の指標としての個体内ヘテロ接合度を計測し、両系統間で比較解析を行った結果、湿潤環境適応系統ではニューカレドニアへの侵入直後から種間で共通して集団サイズが増加し、約300万年前から急速に減少した事が明らかになった。他方、乾燥環境適応系統では侵入直後は集団サイズの顕著な増加が見られず、約300万年前から集団サイズが増加していた。また、湿潤適応系統と比較して乾燥適応系統では現在のゲノムにおける遺伝的多様性が有意に高かった。この様な、過去1000万年間の個体群動態は、乾燥化前後のニッチの増減を反映していると考えられる。乾燥適応系統は約100万年前以降に種分化が活発に起こっているが、同時期に集団サイズがピークに達しており、集団サイズの拡大に伴う遺伝的多様性の増大が乾燥適応系統の多様化を促進した一要因であると考えられる。乾燥適応系統は現在のゲノムに高い多様性を保持していることから、今後も多様化のポテンシャルを有している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニューカレドニアに生育するOxera属植物で分類群間比較をゲノムレベルで行い、デモグラフィー推定や遺伝的多様性の観点から、過去数百年間に起こった乾燥環境と湿潤環境への適応に関して理解を深める事ができた。また、今後の環境適応に関して乾燥環境へ適応した系統は、より高いポテンシャルを保持しているという興味深い示唆を得る事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画通りに研究を推進する。
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